紡錘
さすがに妊婦を働かせる気はあんまり無いので、義姫には軽めの仕事、編み物などをやらせておくことにする。
何もやらせないのは逆にイジメになっちゃうからね。
帰り道を慌てていた時に、道を整備しておくことを考えていたけど、消費EPを考えたらどう考えても採算が取れない大事業になるからそれは諦めることにした。
合計で10000Pぐらいなら捻出することも考えられるんだけど、もう一桁上になると、さすがに無駄が大きすぎるって思うよ。
試しに何もないところに石畳を作ってみたけど、10mも無いところで100Pだったからね。木を切り倒して切り株を抜き取って、更に石畳とかやったらもっとEPが消費されるだろうからね。ピンポイントに獣道を作るぐらいでちょうどいいかもしれないよ。
そんなふうにできない事に思いをはせてもしょうがないから、僕は次の仕事について考えておく。
信綱と義輝は誾のサポートで焼き窯作り。
卜伝と蔵人は衣服の作成の前段階で、布作り。
新人のゴブリン、刀3匹はタケノコ狩りをメインの仕事にしている。
この中で僕が手を貸すのは、布関係だ。
僕に江戸時代レベルの機織り機を作るなんて凄い事はできないけど、中世ヨーロッパ式の糸車を作るぐらいならできる、はず。
ダンジョンやホームでは金属パーツを作れないうえに、木製パーツすら手作りになるので、難易度はベリーハードを飛び越えヘルモードだ。ルナティック級かもしれない。
それでも図面はあるし、一つ一つパーツを作っていく。
作ってみては機械精度が出ないことに落ち込みながら作り直し、おが屑を量産していく。
ペダル付きの糸車なんて贅沢は言わない。まずは紡錘から順番に改造していくつもりだ。幸い、作ったものに機能を追加していくだけで糸車はできるみたいだ。
ダヴィンチもなんかよく分からない糸車の絵を残しているけど、これは資料が少ないし実現できるか分からないから見送ったよ。
せめて誰かが組んだ実物でもあれば挑戦する気になるんだけどね。
糸車の前段階、紡錘は色々形があるけど、ネット動画で見つけたものと同じ形の紡錘から作る。
紡錘は下の方に円盤がある棒状のもので、上の先端に綿などを引っ掛けては円盤をくるくる回して糸を作るようになっている。
ある程度糸ができたらできた糸を棒に巻き付け、また円盤を回し糸を作っては棒に巻き付けることを繰り返す。
僕が見たのはそんな動画だ。
ちなみにその動画では紡錘で双糸を作る方法とか書かれていて、いったん糸にしたものを六角形の機械に巻いて取り置き、より合わせて太めの糸を作っていた。
できた双糸は細めのロープみたいなもので、あれはあれで何か使い道がありそうに見えたね。
で、実際にこの紡錘を作ってみると、表面加工が雑だからか糸がこすれて切れそうになる。
ちゃんと目の細かいやすりで処理しているのに、元の木材の性質なのか、なかなかこのざらつきが取れない。呪われているんじゃないかと思うほどだ。
ちゃんとしたものならニスとかを塗って表面をコーティングするんだけど、そんな気の利いたものはここにはない。一回だけ試したことがあるんだけど、僕と一緒に日本に戻ってくるし、その時に形も残らず潰れるから無駄なゴミを作るだけになっている。
もしも形が綺麗に残るなら、向こうで作った物を使って面白い何かを作れそうな気もするんだけど……僕でもすぐに思いつくような事はいろんな人がいろいろ試していて、どれも上手くいくはずもなかったみたいだ。
この手の一攫千金ネタは抜け穴扱いで消されているんだろうね。




