信綱らの報告
信綱らを見送ると、某ロボット系ADVゲームの挿入歌が脳内BGMで流れ出した。
別に時空が震えているわけでもないし、遺影をもってスペースシャトルを見送っているわけじゃないんだけどね。見送るとそんな気分になるんだ。
残る僕らは拠点の周辺で採取をする。
採取は毎回同じ所に同じ物があるから、採取物がある場所はどこぞのモンスターのハンティングゲームのように採取ポイントなどと僕は称している。
やることがないので、せめてこの辺りで手に入る綿花やら何やらを回収するんだよ。
綿花は小さい鞄の半分しか埋まらない。3回ぐらいやれば服一着分になるかな? なったらいいなぁ。まだ服飾関連のスキルがないから素材を無駄にすることが多いんだよ。
ほかに手に入る物に、推定・鉄鉱石がある。
本当に鉄鉱石かどうかは分からないんだよ。ネットで調べた写真を参考に集めているけど、自信は無い。この辺りは製鉄用の炉を作れるようになってからかな。
なんかね、たき火で製鉄をしている動画もあったけど、僕がやっても上手くいかないんだよねぇ。
ヨモギも手に入るから、入浴剤代わりに採取したりもしているよ。
やることがルーチンになると、効率化されて作業時間はどんどん短くなる。
そうしてできた時間は休憩時間よりも別の作業時間、例えば編み物の時間などに充てられる。
他にも料理の練習とばかりに僕の持ち込んだ果物の皮むきをするなど、自身の成長のために時間を使う。信綱と義輝、うちでも特に行動的な2匹がいないから、インドア系の行動に偏っている感はあるけどね。
各々が己の時間を使い、食事をとり、体を休めるうちに夜の帳が下りる。
そうして夜の9時を過ぎるころ。
「ギィッ!」
「グギャッ!」
信綱と義輝が帰ってきた。
怪我をした様子はないが、返り血を浴び泥で体を汚している。動物かゴブリンか。多少の戦闘行為があったみたいだね。
僕では2匹の言っていることが分からないから誾に話を聞いてもらう。
「道中でゴブリンの一団と遭遇したようです。数は4匹。
戦闘は回避できなかったので、これを殲滅しました。なお、この遭遇したゴブリンらは、ろくな装備を身に着けておらず、雑兵のようであったという話です」
誾の説明では、偶然すぐ近くにゴブリンと出くわしたみたいだ。
そして争いになったので全滅させた。
相手が武器や防具を装備していなかったので勝てると踏んだのもあるんだろうけどね、うちの子たちは好戦的だね。
今回は勝ったから良しとしよう。
本来ならば交戦は避けるべきで、逃げを打つのが命令通りだ。だけど逃げられないと判断したタイミングであれば、逃げるのを強要して「逃げて死ね」と言う無能な指揮官になっちゃうし、僕はやらない。現場も知らず言いたくない。
逃げられなかった事を確認し、そのうえで次は逃げられる状況を作り、ちゃんと逃げるようにと釘を刺す。
今回の処置はこれでいいかな。
信綱らの報告を聞き終えたら、もうお休みの時間だ。
ゴブリンには≪暗視≫アビリティがあるけど、僕には無い。暗くなったら出来る事も無いんだし、さっさと寝るに限るね。
電灯の無い世界の夜は早く、朝も同様に早い。
夜更かしすると起きられなくなるんだよ。




