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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
若鳥オーヴァーランダー
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オーヴァーランダーの作る闇

 オーヴァーランダーに関する問題はいくつもあるが、その中で最も大きなものはお金に関する問題だ。


“オーヴァーランダーのプレイヤーからは税金を取れない”


 これが国に関わる者にとって大きな問題となっている。





 オーヴァーランダーで稼ぐ者は、「死ななければ」高収入が約束されているようなものだ。

 なぜなら、彼らの働きは異世界での出来事であり、現実世界には全く関係しないからだ。普通の人の数倍の時間を労働に充てているのだから、普通の人の数倍稼げることは不思議ではないのだ。


 当初はどこの国も税金を掛けようとしたのだが、最初にその法案を通した中国では、オーヴァーランダーと連動したオークションアプリが動作しなくなった。

 信用と信頼の公式オークションアプリが使えなくなったのだ。



 問題発覚当初、中国政府は何もしようとは思わなかった。

 連動アプリが使えなくなったことは痛いが、オークションアプリはどこにでもある。大手のオークションサイトを使えば売買は容易である、はずだった。


 問題はすぐに発生した。

 公式が保証していないという事は、偽物が混ざるという事だ。すぐに大量の偽物が横行し、本物ですら買い手がつかない状態になった。

 同時に、アプリ元が流通させていたと思われる高額商品が出回らなくなった。『若返りの薬』など、特に需要が高い物は全く手に入らなくなったのだ。もちろん偽物は流通していたが、そんなものに数百億もの金を出す馬鹿はいない。試しに買おうという者は現れない。いや、売りに出していた者はいたのだが、リアル割れして本人が襲撃され、物を奪われるという事件が多発しただけで終わるのだ。

 つまり、命がけの戦いをしていた多くのプレイヤーが貧困にあえぎ、その成果をかすめ取られるだけになったのだ。

 治安はとても悪化した。


 それに、中国はこの時までプレイヤーが多くいたのだが、その「ダンジョンで生き残り稼ぐことができるプレイヤー」が外国に逃げだした。

 さすがの中国政府も事態を重く見て税制免除を宣言し、他国もそれに倣うことになった。



 これでは誰も得をしない。損をするだけだ。


 そんな理由で税金を掛けなくなった各国であったが、それにより新たな問題が発生するのは自明の理である。

 オーヴァーランダーは、犯罪者の資金調達源として使われることになった。


 犯罪者がオーヴァーランダーをプレイし、アタックを重ねて資金を得る。

 暴力団の様な組組織がそれを行えば連係プレイも容易となる。資金の配分も暴力をベースに会社的に処理され、ある種の公平さを持つギルドが出来上がった。


 軍よりも固く柔軟なギルドとなった暴力団は、普通のプレイヤーよりも多くの金と貴重な品を得る。

 儲かると分かれば、貴重な品が手に入るとなれば、その資金と希少品を使って政治家などと懇意になることも可能である。


 残念ながら、オーヴァーランダーの運営は、この件に関しては沈黙を保っている。



 表の権力と裏の暴力が繋がれば、それは腐敗と不幸を呼ぶ。それもものすごい勢いで。


 特にオーヴァーランダーは法規制が難しい側面もあったので、鎖となるものが無かったのが災いした。

 暴力団はプレイヤーと言う名の仮面を付け、オーヴァーランダー関連の品を扱うフロント企業(表向きの会社)を作るようにもなった。当たり前の話だが、オークションで得たものは使うための物であり、それを入手できない者たちにしてみればこういった代理店、取扱店があるのは普通に嬉しいものだから、この手の企業は莫大な利益を上げている。


 もちろん裏ではオーヴァーランダーとかかわりのない組員が犯罪行為を繰り返し、それ以上の利益を得ている。

 オーヴァーランダー由来の品が必要になる理由、それを探り出すことで脅しネタなどの交渉材料を得ている者がいるのだ。

 金やコネと言った力をそのまま使うだけでなく、悪知恵を働かせるのはやくざ者の十八番(オハコ)なのであった。



 なお、この手の企業と冒険者ギルドは真っ向から利害がぶつかり合うため、互いに反目しあっている。




 暴力団がのさばれば、当たり前だが治安は悪化する――と言うわけでもない。

 全体を見れば治安は向上し、犯罪も減る。


 警察発表によるものに限って、だが。


 どちらかと言えば、やや不幸な者が減り、そのしわ寄せで不幸になる者の堕ち方がより一層酷くなっているのだ。

 それが社会にとって善い事なのか悪い事なのかは、神のみぞ知る。



 ただし不幸になる者にとっては、間違いなく悪い事である。

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