対策会議①
「長様、子作りをしましょう。それで数を増やし、正攻法で正面から彼の集落を打ち破るのです」
「却下」
「では、子作りだけでも」
「僕は無理だよ。信綱に任せるけど、それでいい?」
「くっ!」
みんなで戦っているので、みんな状況を正しく理解している。
しかし、打開策を思いつくかどうかは話が別なんだよ。
誾は思いっきり本能に忠実な方法を提示した。
もちろん却下したし、軽く睨んでおいた。
誾はとてもとても悔しそうで、どうにか僕の子を孕もうと画策しているのがなんとなくわかる。
なんというか、誾は巫女さんなんだよね。僕を神様に据える感じの。
今は古代宗教の時期というか、現人神な僕の国というか。そんなだから、誾は僕の血を残そうと躍起になっている。
……可能か不可能かって話なら、DNA的には可能で、心情とか性的な思考を加味してみると、完全に不可能なんだよ。
なんでこんな実験結果が外に出回っているかというと、ファンタジーあるある、ゴブリンのところで種付けされた女性がいるって話なんだよね。時間経過で物理的には戻ってきたけど、お腹の中にはゴブリンの子供を仕込まれていたわけだ。
だから逆もできるだろうっていう話だけど、だからと言ってそれを僕ができる訳じゃないという。
ゴブリンの外見は、緑の肌をした小柄な人型だ。髪の毛は無いし、目はギョロギョロしていて耳が尖っている。皺くちゃじゃないからまだマシだけど、ほぼ完全にクリーチャーです。ありがとうございます。
そんなゴブリンとアレができるのは、きっと一部の上級者だけだと思う。
誾のたわ言は聞き流して、他のメンバーの意見を聞くけど、僕の催涙スプレーで作る催涙弾作戦が一番マシって話になった。
火を使えるようになると、鉄を使えるようになる可能性が出てくるんだよね。
うちではスコップがあるから……って、数を増やすなら僕らも自前の鉄装備が必要になるじゃないか。
「竹槍でも持たせればよいのでは? 江戸時代の農民はこれで『びぃにじゅうく』を撃ち落としたとありましたが」
「江戸時代に戦闘機は飛んでないよ。それに農民でも刀で武装していたって言うよ?」
B29はネタとしてどこかの漫画がやっていた奴だったっけ?
誾の教育に絵本ならぬ漫画を持ち込んだけど、変な知識を与えていたようだ。
でも、竹槍は悪くないかな。
今も投擲用に使っているし、ストックはそれなりにある。
そうだ、竹で弓でも作ってみるかな?
ネットでスペックを確認してから、20m先を攻撃できそうなら試しに作ってみてもいいかもしれない。
それはそれとして。
「信綱。窯の進捗は悪くないと思うけど、もしかしたら製鉄を先に始めるかもしれないから覚えておいて」
「ギャッ!!」
鉄に手を出すのはまだ時期尚早って気もするけど、将来の予定として頭の片隅に置いておくのは悪い事じゃない。
スケジュールを作るには納期指定というか、期限を切ってないのでダメダメなんだけど、先を見据えた行動って大切だよね。
信綱もやる気だし、将来的には刀を扱えたら面白いんだろうけど。
……それ、何年先の話になるのかな?




