風呂から始まる新組織
アタック35回目。
EPが貯まったから、五右衛門風呂を購入。念願のお風呂を手に入れたよ。
ただね。
某ファンタジー小説で、お風呂の事を「悪魔の設備」って言っていたキャラがいたのを思い出したよ。
「これで……ラスト!!」
僕は今回はこれでいいやと持ち込んだ、バケツに汲んだ水を風呂桶に入れる。
一回当たり10リットルぐらい? それを20回繰り返して風呂桶に水を貯めたんだよ。
かなり疲れたけど、次は湯を沸かさないといけない訳で。用意した大量の薪を風呂の下にセットして、火を点ける。
お湯がいい感じに沸いたら温度を確認して、適温にする。
僕は熱めのお湯が好きなんだけど、熱すぎて入れないってところまで火を点けっぱなしにする訳にもいかないから。そこは試行錯誤の連続だったね。何とか入れる温度に調節するおは大変だったよ。
それでようやく入れたお風呂は、極楽だった。
「ふぃ~~」
思わず気の抜けた声が出る。
疲れをとる風呂に入るためにとっても疲れたのはある意味では無駄の極致なんだけど、これは今後に繋げる第一歩なんだから、僕は後悔なんてしていない。
「長様。『お風呂』と言うのはそこまで気持ちいのでしょうか?」
「極楽、だよ。誾」
ゴブリン達に、入浴の習慣を作るためには必要な行為なんだよ。
ゴブリンには、お湯に浸かるという概念が無かった。
体を洗うというのは合理性に基づき必要な行為と理解していたけど、お湯という物の事を知らないゴブリンにとって、入浴なんて言う習慣があるはずもなかったんだ。
僕のところでお湯の事を知ったけど、それはあくまで料理の為の物で、体を洗ったりするのに使うとは最初は考えていなかった。僕もお湯は使えず、冷たい濡れタオルで体を拭く事しかできていなかったからね。
そんな状況を打破するためにも、僕が率先して入浴文化を広める必要があるんだ。
「順番に、順番にねー」
「グゥゥ~~」
僕の次に風呂に入ったのは信綱だった。
やっぱり序列は大切で、信綱から誾と義姫、蔵人、卜伝、義輝と、サーヴァントになった順番で入る順番を決めた。
ちみっこだった義姫だけど、もうずいぶんと大きくなったんだけどそれでも最年少の特権で、誾と一緒に入っている。
ちなみに、湯船に浸かる前に身体を洗わせるのは徹底したよ。身体を洗うこと自体はお風呂が無くてもやらせていたから、そこは特に混乱する事も無かったんだけど。
湯の中に入る事は、この場にいる全員が気に入ってくれた。
ペットなんかでもお風呂を嫌がるって話はよく聞くし、ゴブリンはどうかなって思っていたけど、入浴の習慣は完全に受け入れられていた。
問題は入浴時間で、お湯を沸かし直すための薪が足りなくなって急遽ダンジョンまで走る事になったとか、1人当たりの入浴時間をどれぐらいに設定するかで揉めたりしてしまったけどね。
大きな問題は発生しなかったと思うよ。
「長様。この入浴は素晴らしいのですが、どの程度の頻度で出来るのでしょうか?」
「現状では、3日に1回だろうね」
「2日に1回は難しいですか?」
「無理とは言わないけど、それだけの薪を集める事は出来るの? 木材は建材として使うために用意しているけど、燃料として使う予定はないよ? 竹では火力が足りないし、どうにもならないよね」
「増えた分は労働時間の延長でどうにかしてみせます」
いや。誾が風呂にハマってしまったのか、もっと風呂に入りたいって言いだしたのは大きな問題かな?
お風呂に入るのは、とても手間がかかる重労働だ。「湯水のごとく」なんて言い回しも、その大変さから来た言葉だし。早々頻繁に入れると思わないでほしいんだけどね。
「あとは人員の増員も、検討していただきたいと思います。
我々と同じ待遇のゴブリンを増やすのが難しいのであれば、我々を長様の直属に当たる幹部とし、下部構成員を組織することで維持できる組織づくりをする方針はどうでしょうか?
もとより衣類などを現地調達で賄うようにする動きをとるのであれば、それを使う者達を用意することも今後の為と愚考する次第です」
「あー、うん。ソウダネ」
風呂のためにそこまで話を進めるかね。
まぁ、蔵人たちのチームでやっている服飾関係は、僅かだけど進歩はしている。超時間がかかるけど、糸から布を作るところまではなんとか結果が出つつある。機械織りが出来ないから、超時間がかかるんだけどね。
いや、本当に布を作るのって時間がかかるんだよ……。
そんな蔵人たちの作る布で服を作れば、使う奴らも欲しいのは確かな訳で。
かと言って身分制度を導入するのは……変なところで日本の常識に拘る、僕の悪い弱さかな? ここで日本の常識に拘った組織なんて作れないのは確かなんだし。
そうだね。
古い身分制度を導入することになるけど、そうしないと組織の拡大は難しいか。
いろいろと、この場に見合った常識を作らないといけないかなぁ。




