カレー
ダンジョンアタックを終え、僕は家に戻った。
時間は昼だけど、ご飯は向こうで食べてきたのでそのままネットに『ゴブリン〇本桜』シリーズの投稿をしておく。
最近は固定ファンがついてきたので投稿を楽しみにしているといったコメントもついてきたのが嬉しい。
ちなみに、今の一番人気は義姫。
1匹だけちみっ子でたどたどしい踊りなのだが、それが保護欲を刺激するみたいだね。
「ゴブリン相手に可愛いと思うとか……脳外逝ってくる」「ロリは正義なのです」「カワ(・∀・)イイ!!」などなど。今度本人に伝えようと思う。
「ロリ期の誾さんは何で駄目なんでしょうねぇ(・∀・)ニヤニヤ」といったコメントは胸の内にしまっておくけどね。
動画の投稿をしたら、外に買い出しに出かける。
僕は車を走らせ、近所のホームセンターに向かった。
ホームセンターで、新しいスコップの補充と古いスコップの廃棄をした。
スコップは消耗品なので使っていれば壊れてもしょうがないって言えるけど、武器として使った場合はその「しょうがない」の範疇に入ってくれるのかなと、そんなことを考えたりもする。
「にしても、壊しすぎじゃないっすか? 先輩」
「しょうがないだろ。酷使してる自覚はあるさ。でも、そうしなきゃ生き延びれないんだよ」
「んー、これはまだ大丈夫っすよ。ネジ締めるだ――あ」
「ネジ締めなら僕も何回もやってるよ。何回もやったからここに持ってきたんだよ。はい、処分費用」
「うっす! 毎度あり!」
どこのホームホームセンターでもやっている、というわけではないけれど、僕の行きつけの店は農具類の引き取りもやっている。スコップやフォークなど、処分に困ったときの強い味方だ。
ここでは大学時代の後輩がバイトをしているので、顔を合わせれば話ぐらいはする。
僕は友達連中とは距離をとったけど、元からそこまで仲良くない顔見知りとはいちいち距離を取ろうとしなかったからね。互いにいい距離感で付き合えていると思う。
「しっかし先輩。オーヴァーランダーってそんなに儲かるんすか?」
「体感2ヶ月で100万円を多いって言うか少ないって言うかは人次第。初期投資を考えるとあんまり儲からない? もっとも、ゴブリンを殺せるかどうかが分水嶺だと思うけど」
「それなんすよねー。俺、グロ耐性無いっす」
「じゃあ無理だよ」
「っすよねー」
後輩は僕がオーヴァーランダーをやっていると知っている。
このホームセンターでかなり大きな買い物を何度もしているので、バレない方がおかしいとも言う。
僕へ変に隠し事をしなくてもいい相手がいるせいか、内情をやや話し気味になってしまうので、たまに気を引き締めないといけなくなる。
「んじゃ、死なないようにしてくださいね~」
「お前も気ぃつけてねー」
後輩とずっと駄弁っているのは仕事の邪魔になる。僕はスコップやレトルト食品など、買う物を買うと早々に店を立ち去った。
そして、リアルの3日後にこの後輩が襲われたという話を聞くことになる。
そんな先のことは知らない僕は、いつものようにダンジョンアタックを開始する。
初日のノルマを終え、キャンプ地――一応は野営訓練目的なんだが――で、カレーを作り出した。
カレーは匂いが強いのでダンジョンアタック向きじゃないけど、気分転換にもたまにはカレーを食べたいと思っていた。
最近は自炊らしい自炊をしていない気がするし、お店のカレーではない我が家のカレーは、全然食べていない。
家族を亡くしてからは0回だ。
そんな理由もあって、レトルトではなくちゃんと現地で肉や野菜を切った、ごく一般的な市販のルウを使ったカレーを作った。
市販のルウを使うだけあって、特にひねりのある味付けでもない。ただ、複数のカレールウを混ぜて使うってだけの豚肉入りカレーだ。
「れとるとのカレーも美味しかったですが、自分で作ったカレーも美味しいです。頻繁に作れないのが残念です」
「ギャギャッ!!」
カレーは甘口をメインにしたので、ゴブリンたちも辛くて食べれないということは無かった。
まぁ、レトルトのカレーを食べさせたこともあったので、無理ってことは無いと知っていたんだけどね。基本的に好評だと思う。
「……」
「……」
「「ギャッ!!」」
特に信綱と蔵人はカレーが好物らしく、味をかみしめるようにカレーを食べている。
カレーは僕が持ち込まないと食べれない味の一つなので、レアなこの機会を満喫していると思う。
逆に義姫には甘口でもまだ早かったようで、食べるペースは遅い。
カレーに対する評価はゴブリンそれぞれ。
誰もが気に入る味を用意するのは難しいだろうね。




