窯の研究をさせる
途中までだけど生レンガを焼いたことで、そこそこ焼けたレンガが出てきた。
ただし、あんまり固くないし、コンクリートブロックのような力強さがない。
「レンガの力強さってなんだよ」って言われそうだけど、空手の正拳突きに耐えられそうな感じというか、車の衝突実験に使われそうなイメージというか。
僕の中では「コンクリートブロック=強い」ってイメージがあるんだよ。
とにかく、窯の中にあったレンガは乾燥レンガよりはマシ。その程度の評価しか出せない代物だった。
「というわけで、もっとレンガに最適な土を探すのと、窯の改良が今後の課題だね。
可能なら石灰を探してコンクリート造りに着手したいんだけど……無理だよねぇ」
「すみません……私たちに、もっと知識があれば」
「それを言ったらお互いさま。僕だって石灰を探して来いって言われても対応できないし」
僕も誾も、蔵人も他のゴブリンたちも石灰を見つけるなんてできない。
そういった事態に対処するためにスキルやアビリティの外付けがあるんだけど、まだ手が出せるほど余裕がないからね。
ちまちまと、積み重ねるしかない。
「窯は今後、誰に任せようか?」
「希望者を募ります。長様、しばらくお待ちください」
暗い顔でする反省会は投げ捨てて、もっと前を向いて話そう。
僕は話題を切り替え、みんなの状況を確認しても新しいスキルこそ手に入っていなかったけど、窯作りに前向きなメンバーに招集をかけるようにした。
僕の意を受け、誾はすぐに動き出した。
「「グギャッ!!」」
窯作りに興味を示したのは、信綱と義輝。
あんまり共通点の無いコンビだ。
この2匹が窯に興味を持った。
ただ、2匹の興味は別方向を向いていた。
信綱は「火」に興味を示した。
これまで集落殲滅の初撃に火攻めをしていることもあり、信綱は火に対する認識がしっかりしている。
窯は火を使う者にとって大きなステップアップになるものだからか、「窯を作り」「強い火を手に入れる」事に興味を持った。
火入れの役にしり込みしたのは御愛嬌と言ったところだが、今回は見逃そう。あんまり責める事でもないし。
義輝は、窯を作るときのアーチ構造に興味を持っている。
あの窯は最終的には僕が竹の枠を作って誤魔化したんだけど、アーチ状にすることでレンガの自重を使った建築物を作ることに関心を持ったのだ。
つまり義輝は建築家としての感性を持っているって事かな? 義輝は狩人系だと思っていたからかなり意外だよ。
まぁ、狩人だからって建築物に興味を持たないわけじゃないし、人の趣味にはあまり口を挟むものじゃないよね。
候補者が出たことで、僕は資料を渡して放置することにした。
翻訳は誾がするとして、3匹でチームを組んで、試行錯誤してもらうことにした。僕は僕でやることがあるからね。窯にばかり、かまけてはいられないんだよ。
次回はEPで土地の拡張かな。
何をするにしても、今のままではせまっ苦しいだろうからね。
ちなみに、他のメンバーはタケノコ狩りや建材用の伐採、その他採取をやらせているよ。
働かざるもの食うべからず。
それは基本だよね。
新メンバーで、まだちみっこの義姫相手でもそこは容赦しないんだよ。
そんな風に、新しいことに手を出して今回のアタックは終わり。
次は遠征用にカレーを用意しよう。
お外で食べる美味しい料理と言えば、これが定番だからね。一泊分ぐらいならレトルトじゃないカレーでもいいかな?




