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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
ひよっこオーヴァーランダー
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信綱の成長

 何をするにもEPを貯めなきゃいけないので、僕は信綱と卜伝を連れて、いつものように集落の殲滅に行く。


 この2匹だけを連れて行くわけだけど、残りの4匹にもそれぞれ仕事を割り振っている。

 蔵人と誾に麻糸作りやその他生産活動を任せ、ハンター義輝には兎や猪のハンティングを依頼。新ゴブ・義姫にはドングリ集めをするように言っておいた。



 森の中を移動するとき、僕らは一切口を開かない。

 冒険小説で移動中に雑談するシーンがよくあるけど、あれって嘘だと思う。森の移動中にお喋りしていたら獲物の方が先に僕らに気が付いちゃうし、お喋りに意識を向ければ周囲の観察や警戒が疎かになったりするから、害悪だと思う。


 だから僕たちは移動中の意思疎通をハンドサインだけで行う。

 と言っても、「行くぞ」「止まれ」「休憩だ」「敵がいるぞ」など、ごく簡単なサインをいくつか決めておいただけなんだけどね。

 それに先頭を行く僕が指示を出すだけで、もし後ろにいる2匹が敵を見つけるなどした場合は普通に声を出して警戒を呼び掛けるわけだけど。


 でも、基本的には喋らない。

 そこに嘘は無いんだよ?





 いつものように、敵ゴブリンを殲滅する。

 基本的には接近されないようにカタを付けるのが僕らのスタンスなんだけど、今回はどうにも上手くいかなかった。

 敵のリーダー、ホブゴブリンがパワーアップしたようなのだ。


「信綱!」

「グギャギャッ!」


 ホブゴブリンは、僕の投げたボーラで一瞬だけ足を止めたけど、うまく引っ掛からなかったからダメージによる硬直だけですぐに突進を再開した。しかも柵と柵の間にいる僕を無視し、柵の上に手をかけると、ジャンプ一発で柵を飛び越えてしまった。

 ホブゴブリンが向かったのは信綱の方で、僕はすぐにフォローできる位置にいない。

 信綱は周囲の地形を活かす≪パルクール≫スキルで逃げ出したけど、ホブゴブリンは執拗に信綱を追いかける。


「グギャッ!」


 卜伝が用意していた石を投げて背中にダメージを与えるけど、逃げる形になった相手の、毛皮をまとった背中に石をぶつけても効果は低い。

 残念ながら、卜伝は戦力外になってしまう。

 一応、竹槍も持ってきてはいたけど、投げても速度が足りないだろうから、きっとダメージを与えることができないと思う。

 投擲武器って攻めてくる相手には有効だけど逃げる相手にはやや効果が出ないんだよね。



 ホブゴブリンから逃げ回る信綱。

 速度で言えば信綱の方が速いんだけど、体力はどう考えてもホブゴブリンの方が上だろう。このままではバテた所を捕まって殺されることになりそうだ。


「信綱! 大周りでこっちに来い!!」


 逃げる相手に効果が薄いなら、こっちに向かって来させれば全て解決する。

 僕は信綱に大声で指示を出し、こっちに来いと言って見せるが。


 ホブゴブリンは僕と信綱が合流するのを嫌がったのだろう。絶対に合流させないとばかりに位置を変え、信綱を追い詰めようとする。

 僕はそんなホブゴブリンに苛立ち舌打ちすると、信綱のいる方へと走り出す。

 こっちに来させれば罠を使えたんだけど、そんな悠長なことを言っていられる状況ではない。とにかく今は追いかけるのが先決だ。



 僕は僕で移動系のスキル≪悪路走破≫を持っているので、信綱たちよりも足は速い。

 それでも信綱が追われてから僕が走り出すまでの時間、そこで空いてしまった距離を詰めるのは難しい。

 1分か2分か。それぐらいは追いつくまで時間がかかりそうだと思った。


 信綱を殺されたくない。

 その思いで焦りが生じるが、その焦りが加速する事態が発生した。


 信綱が足を止め、スコップを大きく後ろに振り回したのだ。



 そこに至るまで、信綱の周囲は木々に囲まれ、スコップを横に振り回すだけのスペースがなかった。

 しかし、信綱が足を止めたそこは開けていて、スコップを振り回しても大丈夫だったのだ。

 信綱は周囲の地形をちゃんと覚えていて、自分が戦いやすい場所まで敵を誘導したのだ。


 もちろん僕の指示通り、合流できるなら合流を優先したと思う。

 しかしそれができないなら、自身が戦いやすい戦場を指定したわけだ。なかなか考えている。



 その後、信綱を攻めあぐねているホブゴブリンの後頭部に僕はバールを突き立て、敵を即死させた。


 みんなちゃんと強くなってる。

 僕は危険だったけど、目に見える戦果を出した信綱らに頼もしさを感じるのであった。

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