ゴブリン衣服事情①
冒険者ギルドは常時プレイヤー不足で、もしその気になったらいつでも連絡してほしいと言われた。
ついでに結婚相手を探そうかとも言われたけど、どっちも笑顔でスルーした。
下手な反応を見せたくなかったんだよ。
冒険者ギルドに行って思ったのは、人材不足とギルドマスターの未熟さかな。
プレイヤーの数が足りないっていう内情を僕にバラすのはいいとして、僕に意見を求めるのはどうかと思う。組織内部の意見では手詰まりだって言われると、所属することに不安しか感じないよ。
それにこっちを本気で引き込もうとする様子が見えなかった。
多分も何も、ヤクザに僕の家と土地が狙われていることは知っているはずで、その厄介ごとを自力で片づけたら、その後に本気で勧誘してくるのかもしれない。
僕を本気で引き込むなら、その問題解決を提案する――訳にもいかないか。問題が解決したら引退されかねないしね。
相手の考えでは、たぶんだけど、僕がプレイヤーとして引き返せない所に行った後に仲間に引き込みたいって所だろうね。
欲しいのはプレイヤーで、元プレイヤーじゃないんだし。
まぁ、お金ももらったし冒険者ギルドはもういいや。
明日のアタックに備えて少し買い物をしようかな。
アタック28回目。
僕は新人ゴブリンを『義姫』と名付けた。
2匹目の雌で、誾を見ると今後が期待できる気がする。可能なら≪日本語≫スキルを覚えてほしいね。
とりあえずは、誾に倣って『〇本桜』を踊るところから始めようか。
ゴブリンが増えたことで、ゴブリンに着せる服のことを面倒と思うようになってきた。
今はまだ6匹だからいいけど、今後、ゴブリンが増えるたびに僕が服を持ち込むのはとても面倒くさい。可能ならこっちで作りたいと、切実にそう思うようになってきた。
今のところ、ダンジョンに出現するゴブリンは毛皮をまとった状態で現れる。
そのゴブリンから毛皮を奪って、石鹸で洗って、干してから敷物にしているけど、これを着るのはゴブリンたちも嫌がっている。
誾いわく、「ごわごわして肌触りが悪く、重くて動きを阻害するうえに着ているときに安定感がありません」との事。
着ていて不快で動きにくくなり、しかもちゃんと服として加工をしているわけでもないので下手な動きをするの簡単に脱げるのが気に入らないらしい。
つまり、毛皮は服にはならない。
ダンジョン内には、麻に相当する植物が見つかっている。
もしかしたら麻そのものかもしれない。
これを加工できれば、布を作ることができるだろうね。
問題は僕に麻布の加工なんてできないってことで、ネット上にも僕でも出来そうな、まともに使える麻布加工の手順動画がないから諦めている。
麻糸なら、なんとか作れるんだろうけどね。そこから先ができないんだよ。
ちなみに、麻糸の加工は割と簡単だった。
皮を剥いでからほぐし、撚って繋げるだけ。手間はかかるけど、難易度は低めだったね。
今は蔵人が一人で頑張っている。
糸はいくらあっても使い道があるからねー。
頑張ればね、麻の糸は毛糸として使えるかもしれないよ?
でもね、僕に≪編み物≫スキルは無い。
そして編み物に挑戦する意欲が無い。
……学生時代に一度挑戦して挫折したんだよ。マフラー1つに1月以上かけて、できたものがボロボロではやる気も無くなるよ。
同じ時間をかけて作った、元恋人はマフラーどころかセーターまで編み終えていたのにね。
やっぱり蔵人頑張れ。超頑張れ。
僕は応援することしかできないよ。




