ゴブリンの集落をホームに作ろう④
僕は即日炎上の動画を忘れ、調べ物をしてから22回目のアタックに向かった。
最初に信綱たちの身長を計ってみたけど、背が5㎝は伸びていた。
子供なゴブリンの成長は、これぐらいらしい。これだけ急激に背が伸びているのに成長痛がなさそうなのが気になるけど、まぁ、人間とは種族が違うんだからそんな事もあるよね。
メジャーで測ってみると、信綱が108㎝、蔵人と誾が103㎝。
大人ゴブリンは140㎝ぐらいだから、1日に1㎝身長が伸びるとして、リアル7日、こっちで42日もあれば大人になるって事だね。
なかなか早いなー。
ゲームや小説でのゴブリンの扱いを思うと、その成長の早さも納得できるんだけどね。
ゴブリンの生態はいったん横に置き、僕はノルマに設定しているゴブリンの集落その1とその2の殲滅のため、ダンジョンに向かった。
ゴブリンの集落にはユニークが一匹。
殺して帰ると、ゴブリンが増える。
殲滅する限りゴブリンは増える。
さて、問題です。
僕はあと何匹のゴブリンを仲間にするのでしょうか?
答えは、0匹。
“今は”だけど、ここで打ち止めなんだね。
ゴブリンは簡単に増やせるけど、これ以上増やすと住む場所がなくなってしまう。
寝るだけなら無理やり寝ればいいんだろうけどね。食事やら訓練なんかも考えると、今のホームのままでは生活できなくなるのが目に見えている。
ちびっこ5匹が上限なんだ。
そんな訳で、僕は今回の残り時間を、家造りに使うことにした。
家を造ると言ってはみたけど、やることは子供の作る「秘密基地」みたいなもの。
竹がたくさんあるので、竹を切って家の形に整えるだけなんだよ。
「たーおれーるぞー」
「「キュゥゥ~~」」
僕が竹をナタで切ると、控えていた新人2匹――命名、『塚原卜伝』『足利義輝』――が竹を回収し、空き地に運んで行った。
僕は空き地を2つ購入し、そこをゴブリン用のホームにすることにした。
竹がいきなり侵食しないか心配だったけど、前回使った植物生長促進薬の効果はすでになく、竹の地下茎がいきなり伸びることは無かったので一安心。
僕らは竹の家を作り始めた。
竹の家の組み方は、ネット上に作り方が載っていたのでそれを参考にしている。
基礎の工事の必要ない、とても簡単な家だった。
穴を掘って柱を立て、屋根も壁も全部竹で組む。
問題は、持ち込んだところで僕がアタックを終えれば一緒に持ち帰ってしまうから日本の釘が使えないことだったけど、竹を加工して作る竹釘で無理やり作った。
あとの苦労は作るもの相応の苦労だから特に気にすることじゃない。
切って、加工して、組んで、建てて。
それを1人と5匹がかりでやると、3日で簡素な家ができた。
壁が竹。
屋根も竹。
一応、床だけは竹じゃなくてダンジョンの木材を加工した板にした。
竹を床にするとデコボコして歩きにくいからね。常時青竹踏みとか、そこまで健康に気を使う気は無いんだよ?
あと、床の中央には囲炉裏にする予定の土むき出しの穴が開いている。
窓が無かったり、まだ鍋をつるす紐は付けていないし、隙間風対策に壁に泥を塗るとか、まだできることはたくさんあるけど、そこは今後の頑張りに期待しよう。
欲張りすぎても、いつまでも完成していないってことで区切りが悪いからね。
一見中途半端でも、「ここまで」って言って区切りをつけるのは大事なんだ。
……建材の竹も、かなり使っちゃったからね。区切らないといけないんだよ。
「いぇーい」
「キュ~」
僕は信綱たちと手を打ち合って互いの頑張りを褒め合う。
みんなで頑張って、みんなで作った家だ。割と嬉しい。人が見ればみすぼらしいと言うかもしれないけど、嬉しいものは嬉しい。
新人の卜伝と義輝はまだ僕らが何をしているのか分かっていないけど、信綱たちは僕のやっていることが喜びを分かち合う行為だと理解している。
そう考えると、信綱らは僕に、人間に感化されてきているなぁと思わなくもない。
これも一つの成長なんだろうね。
今回の作業で、新人と蔵人に≪竹細工≫のスキルが生えた。
あと、いつの間にか蔵人には≪絵画≫スキルも生えていた。
何がトリガーになってスキルが生えたのかよく分からないけど、スキルが増えたのはいいことで、そっち方面を娯楽にできるようにノートと鉛筆でもプレゼントしたほうが良いのかな
4日目にして家が完成したので、どうせだからみんなでそっちの家で寝ることにした。
ベッドにしている草とかを追加で用意するのを忘れていたので、信綱たちは寝るのに苦労していた。板張りとはいえニスも何も塗っていないし、床にそのままは辛かったみたいだ。
明日はベッド作りもしないといけないね。




