ダンジョン初回 1日目
2回目のダンジョン。
ええっと、チュートリアルはカウントしない方がいいのかな? うん、まだ1回目のダンジョンだね。
僕はバールと雑貨、食料などを持って『オーヴァーランダー』を起動した。
バックパックの荷物は重いけど、最大1週間ものダンジョンアタックをするんだから、それぐらいの準備は当然だと思う。
特にお水関係は気を遣ったよ。30㎏は持ち込んだね。
ネットには最低14㎏ってあったけど、あれって本当に最低限なんだ。1日2㎏は死なないようにする、生き延びる為の数字なんだよね。実際に自分が飲む量を計ってみたら3㎏は飲んでいたし、それ以外にもお水は使っちゃうから。30㎏も多すぎって事はないと思う。
特に、これからやろうとしている事を考えたら。
僕が最初に考えたのは、一回のアタック――オーヴァーランダーのアプリを起動することをこう言うらしいね――で稼げるだけ稼ぎたいってこと。
だけど、始めたばかりのアタックで上手く稼げるかなんて全く分からない。
だから自分を鍛えるところから始めるべきなんだ。
僕の持っているスキルは7個。アビリティは無かった。
正直、とっても弱い。20歳なら普通は10個ぐらいあるらしいよ。
まずは、戦闘に耐えられる自分にならなきゃいけない。
ダンジョンを攻略できるようにならなきゃいけない。
ネットにあった情報は鵜呑みにしちゃダメなんだろうけど、手探りでやるよりはきっと効率が良いはずだから、ネット情報を参考に今から本気で頑張ろうと思う。
最初は武器の扱いに慣れる事。
ダンジョンの最初のステージ、僕の場合は『ゴブリンの森』で戦えるようになる事。
この2点を満たすスキルが欲しい。
手持ちのスキルは≪採取≫≪悪路走破≫≪歩行≫≪伐採≫≪料理≫≪木工≫≪記憶術≫の7個。
戦うのに関係しそうなのは、≪悪路走破≫≪歩行≫の2個だけだね。
本当に、戦うのに向いていない。
≪空手≫とか≪剣道≫とか、武道もスキル化されるみたいだから、まずはそっち系のスキルが欲しいんだよね。
僕は『ゴブリン退治』クエストを受けると、ダンジョンの入り口から5分の所まで歩いて行って、バールを振り回し始めた。
ネット知識で集めた剣道の動きを、ダンジョンの中で再現するのが目的だ。
ダンジョンの中、『ゴブリンの森』は、そこそこ整った、あまり荒れていない森だった。
基本的に平地だし、あまりデコボコしていない。
木々はそこまで密集していないし、下草もほとんどひざ下未満、登山靴より上まで背丈のあるものはほとんどない。
落ち葉や小石は多いけど、正直、家の裏山よりも歩きやすいんだよね。その証拠に、ちょっと歩いたぐらいじゃ作業服のどこもほつれたりしない。普通の森を歩けば木の枝に引っかかって服にダメージが入るんだけどね。
最初に練習する型は、上から下に真っ直ぐ振り下ろす「唐竹」、右から左に振る「右薙ぎ」、正眼からの「突き」の3種類。
足運びもメモに書いてきたので、それを参考にバールを振ってみる。
「悪い振り方に、振り切った勢いで体の重心が崩れる事がある」って話なので、体が変に動いていないか、スマホの録画機能を使って確認しながら何度も繰り返す。
10回の素振りごとにスマホで確認するようにすれば適切な休憩になるし、早い段階で間違った振り方を矯正できるって話だけど……どこが悪いのか、それを理解するところから始めないと駄目だね。全く分からないよ。
あとでプロの剣道動画と比べてみよう。
きっと悪い所だらけだと思うけど、何もしないよりはいいよね。
≪剣道≫スキルが生えるまでは頑張ろうと思う。
そうやって体力をそこそこ使ったら、ダンジョンを出てホームに戻る。
バテるまで練習して、そこを襲われたら馬鹿だからね。襲われても返り討ちに出来る体力があるうちに戻らないと。
ホームに戻ったら、そのまま練習続行。
足場が良くなっちゃったから練習の質は下がるけど、安全なホームなんだからバテるまでやる。疲れて体が動かなくなるまで頑張る。
今度は≪調息≫スキルや≪体力回復促進≫アビリティ狙い。
持っている人も多い奴だから、頑張ればなんとかなるんだよ。
だから頑張ろう。
今はそれしかできないからね。
そうやって初めてのダンジョンアタック初日はトレーニングだけして終わった。
ちょっとだけゴブリンと遭遇することを期待していたんだけど、入り口から5分の所では戦闘は発生しないのかな。
次はもうちょっと進んで、ゴブリンが出てくるまで頑張ってみようかな?
それとも、同じ場所でゴブリンが出て来るまでもう少し粘ってみる?
ネットに上がっている情報って、わりと少ないんだよね。
有益な情報は独占したい人の方がまだ多いし。
そもそも、どんな情報に需要があるのか分かっていない人も多いんじゃないかな。
まとめサイトの管理人さんには感謝しかないよ。
僕は秘匿する情報もまだ無いから自分なりに必要そうな情報を考えて、まとめて、提供することにしよう。
これからもお世話になるサイトなんだし、僕も出来る限りの事はしないとね。