ゴブリンの集落をホームに作ろう②
21回目のアタック。
今回は山で竹の地下茎を採取してからの開始になった。
僕は前回買った土地にダンジョンの土を大量に盛って竹用の育成スペースを用意しておいた。
もしかしたら、畑ではない土地では竹が育たないんじゃないかって不安だったんだよね。その点、ダンジョンの土は木々の生える豊かな森の土だから竹の育成に向いていると思うんだ。
それに、雑草類も育てておけばいい環境になるのが早まると思うんだよね。
雑草が畑に混入するのは良くないけど、一般的な植生を考えれば多様な植物が生えている方が良いはずなんだし。
そうやってダンジョンに竹藪を、と動き出したわけだけど、結果が出るまで数年かかる。
もっとも、年単位で時間がかかるというのはそのまま普通に竹を育てるならの話だ。ここはダンジョンのホームだけに、普通じゃない手段が用意されている。
日本に戻ってから冒険者ギルド発行の冊子を読んでいると面白いのが載っていたから、試してみようと思ったわけなんだ。
「植物生長促進剤~」
「クキュ?」
僕が某有名青狸の真似をしてEP交換品を取り出しすと、信綱が不思議そうに首を傾げた。
うん、信綱にはアニメを見せていないからね。元ネタを分かってくれるはずもない。僕は信綱の反応を気にしないことにした。
今回使うのは、植物の生長を著しく早める特殊アイテムだ。
見た目は小さい缶コーヒーと同じぐらいの小瓶で、中に薄い青色をした液体が入っている。コルク栓で蓋がしてある。
これ一本でどれくらい生長が早まるかというと、1年か2年ぐらいの育成機関をまとめてすっ飛ばす不思議アイテムだ。
こんなものを使ったら土地が枯れるんじゃないかと思ったけど、このお薬に必要な水分や栄養まで含まれているらしく、土地に悪い影響は出ないらしい。むしろ土壌が豊かになると大好評の逸品だ。
ただし農業をやるときに手を出さないほうが良いって理由で紹介されていた一品でもある。ちょっとどころか、かなり使いどころを見極めないとダメな品らしいよ。
補足すると、稲や小麦といった数か月で十分な穀物を育てるのには向いておらず、主に果樹などの栽培に使われるらしいよ。
売値は4~500万円ぐらいだけど、持ち帰り用のEPは1万Pとコスパが悪くて、あんまり出回らない品でもある。
今回はこれを使って数年分の時間短縮をしようと思う。
僕が地面に埋めた竹の上から生長促進剤を振りかけると、そこから竹がにょきにょきと生えてきた。
一本、二本と顔を出す竹は数を増やし、天に届けとばかりにぐんぐん伸びる。ついでに雑草もわさっと生えていく。
僕と信綱は顔を上げてその先を見ようとし、口を開けたバカ面をさらした。
竹が足元からも生えようとしたので慌てて距離を取って避難する。
竹はダンジョンの土を盛っていない所まで浸食し、気が付けば僕が持っている土地、水源を置いたところまで自分たちの領域だとばかりに埋め尽くしていた。
あっという間にできた竹藪を前に、なんでこうなったのかを僕は考えてみた。
生長期間を2年ショートカットしたんだけど、細かい話をするなら、春の育ちやすい気候の中だけで2年分の生長期間を得たわけなんだよね。
そう考えると、1.5倍ぐらいの3年分の生長をしたって考えることもできる。むしろ2倍の4年分?
とにかく、紹介文以上に成長したってことだ。
あとは他の植物の影響をあまり受けていない環境で、独占状態だったから早く育った?
竹と促進剤の相性が良かった?
よく分からないね。
検証するにも実証試験を重ねないとダメだし。ネットに情報を上げておくぐらいでいいかも。
僕一人で抱えて正解が分かる事じゃないよね。
僕は出来上がった竹藪を前に、タケノコは無いかなーと、現実逃避することにした。
……あ。米ぬか忘れた。
いや、いきなりタケノコが収穫できるとは思っていなかったから、持ってくる必要性を感じていなかったからだけど。
小さいタケノコは刺身にして食べられるんだよね?
今日はそれを試してみるかな?




