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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
新人オーヴァーランダー
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ゴブリン殲滅戦②

 ゴブリンの集落を殲滅するにあたって、一番の問題はゴブリンの逃走経路だと思う。


 例えば、僕がゴブリンの集落に火を放って一斉避難を促したとするよね。

 でも、その逃げる先が僕の待つ方向とは限らない。全く違う方に行くだけで終わる可能性が十分にある。と言うか、その可能性のほうが高いんだよね。


 じゃあ、せっかく作った陣地に誘い込むにはどうすればいいのか?


 一回ではなく二回ほど、予行演習をして逃亡ルートを確認すればいい。

 どこに火を付けたら陣地のある場所に来てくれるか、実際にやって確かめたんだ。

 僕が陣地を固定したのは、それをやってからなんだよね。二回やって二回とも同じ方に逃げたから、避難訓練的な何かで逃亡ルートが決まっていたんだと思う。


 今回もそうやってゴブリンを追い込んでみた。





 時限式の発火装置でゴブリンの集落に火を付け、僕は防衛陣地で待ち構える。日が照っているときはね、虫眼鏡で十分なんだよ。あとは燃え広げるための燃料があればなんとかなる。

 スマホによる監視で作戦が成功しているのは分かっているから、特に緊張とかはしていない。



 ご飯は控えめ、水はしっかり飲んで、戦う前にトイレも済ませた。もしも尿意を催したとしても最悪は漏らせばいいと割り切っている。

 スコップは予備2本を含め、3本準備してきた。

 その他の装備も用意してある。攻撃手段は多いに越したことはない。


 当たり前だけど、罠の類もばっちりだ。

 自動的に発動するものと任意で発動するものの両方を多数用意してみた。

 罠だけで10匹以上殺す気でいるよ。

 殺意は高めなんだよ。



 僕がキャンプ用の椅子に座って待っていると、ゴブリンの一団が姿を現した。

 相手は僕の姿を認めると、集落に火を放った犯人が僕だと分かって激高した。数が多いからと全員に突撃命令を下す。僕への殺意は最高潮だろうね。まだ50mは距離があるのにぐぎゃぐぎゃと叫ぶ声が聞こえる。



 でもね、甘いよ?


 僕はライターで火炎瓶に火を付けると、全力でそれを投擲した。

 僕から見て20m先、走り出したゴブリンの集団10m手前に火炎瓶が落ちて、地面に置いてあった油の染みた可燃物に火が一気に燃え広がる。

 走り出したら止まるのは困難で、きっと火の直前で止まろうとしたゴブリンたちの足元でも赤い炎が地面をなめる。


 走り出していたゴブリンたちは、そのほとんどが火に包まれた。

 このまま勝負が決まってくれればそれでいいんだけど、世の中はそんなに上手くいかない。

 端っこの方にいたゴブリンなどはすぐに火の範囲外へと逃げ出し、大した被害も受けていない。赤い炎は火の中でも温度が低い方だから、ちっこいゴブリンでもほんの少しの間だけであれば軽めの火傷で済むみたいだ。そこそこ育ったゴブリンであればノーダメージなのかもしれない。


 生き残ったゴブリンは、30匹中10匹と少しってところかな。

 20匹ぐらいは焼き殺せたみたいだ。



 このままであれば、生き残ったゴブリンは僕への殺意以上に生存本能、恐怖心が勝って逃げちゃうんだろう。

 ここまででも十分な戦果なんだけど、僕は更に上の結果を求めている。


 だから追撃、スタート。

 ダンジョンに来たばかりのころに試しでやっていた、木のしなり(・・・)を利用した投石。こっちの方に括ってあるロープを切れば、燃える炎の後ろから石が放たれる。

 位置関係でいうと、炎が20m先を中心に半径10mぐらい燃え広がっていて、生き残りゴブリンたちは僕から見て50mぐらい先で固まっていたんだけどね、ゴブリンから3mぐらい離れた場所を起点に炎の方に向けて石をばら撒いたんだよ。


 投石は炎に向けて走れ、って感じなんだけどね。当たり前だけどゴブリンは炎を避けるように走り出した。僕に向かって来るでもなく、左右に分かれての、散を乱しての逃亡だ。

 ただ、その先にも罠はちゃんと用意してある。もし逃げるにしても、正解は僕に背を見せての逃亡だったんだよ。ゴブリンたちは僕の誘いにあっさりと乗った。



 最初にゴブリンを襲ったのは撒き菱だ。

 尖った金属が素足で走るゴブリンの足の裏に突き刺さり、転んでしまえば全身を傷だらけにする。

 それ以外にもスネアトラップ、足を引っかける草の罠も併用しているし、落とし穴だって掘った。準備は万全なんだよ。



 そのまま目についたゴブリンはすべて無力化され、死ぬか戦闘不能に追い込まれるかといった具合になった。


 終わってしまえばあっさりしたものだよね。

 炎を抜けて僕のところまで走ってくる奴がいるかな?って思っていたんだけど、そこまで気合の入ったゴブリンはいなかったみたいだ。

 接近戦の準備もしていたけど、その出番はないままに殲滅戦が終わった。





――なんてことはなかった。

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