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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
終章 アンサー
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オーヴァーランダー

 急いで結婚するのはやめにした。


 したくなったらすればいい。

 30手前ぐらいで結婚出来ればそれでいい。


 なんか若いうちに結婚して子供を作ったほうが養育費やなんかの関係で有利だとかいう話をされたけど、そこはあんまり気にしなくてもいいと割り切った。

 結婚すると社会的に信用されるという話もあるけど、別に会社経営や就職で有利になったところで良い事も無いし。銀行って、融資するのに結婚の有無を重要視するんだねぇ。知らなかったよ。



 老後の資金は自分で稼げるし、その老後って奴も向こう(・・・)で世話をされていれば、こっちでの負担は最小限で済む。


 正直なところ、今より下の生活ランクでも特に問題を感じないんだよね。

 あっちに比べ日本にいる時間の方が短いから、僕にとって重要なのはオーヴァーランダーでの生活なんだよ。



 まぁ、何もしないのも座りが悪いから、ギルドで軽めの婚活はするんだけど。ちょっとは意識して他の人との交流を維持するよ。

 これは「自分がやりたいからそうする事」だからね。





 僕は広げた村にある、唐辛子畑を見て出来具合を確認する。


「菜種油は大丈夫そうなんだけどね。唐辛子の出来はあんまりよくないかな?」

「長様。菜種油では揮発性が足りません。保管する分には問題ありませんが、催涙弾への使用はあまり適しておりませんが」

「いいよ。ちょっとでも有効なら、さ。器の方もこっち(・・・)製で質が落ちたし。便利だけど、そろそろ魔法で対策されそうだからね。頼り過ぎは良くない」



 畑の方は、これまで持ち込んでいた物を少しでも減らすべく、香辛料や油関係を作れるようにしている。

 牧畜なんかの肉と卵(たんぱく質)などは現状維持。そっちに回す人手は変わってないから。EPの固定数は増やしたけどね。

 魚も獲れるし、食料供給は順調。


 初期から始めている綿花栽培とかは順調だし、布団や座布団とか作りだしているよ。

 服の方は相も変わらず「奪えばいい」だからねぇ。僕らはヒャッハーさんなんだ。

 だから村の生産分は、奪っていない物をメインにしている。そういう意味では、最近、また質の上がった敵の武器類もありがたく頂戴しているよ。


 鍛冶職人は、魔法もあるから武器や農具とか金属系を作るよりもガラス作りに挑戦しているのがね、なんとも言い難い。

 さすがに透明なガラスを作るには至っていないけど、そこそこ程度のガラスでよければ作るのは難しくないからね。杖も量産しているよ。

 この辺りも国産化(?)を進めている。


 船はまだまだだね。

 人を乗せると浸水してすぐに沈むよ。




「宿題はやってきましたかー?」

「「はーい!!」」


 あとは学校とまでは行かないけど、簡単な国語と算数ぐらいは教えるようになった。

 (日本)にゴブリンを送り出すのだから、算数ぐらいできないと拙い。

 先行させたゴブリンたちも、計算能力が低すぎて買い物に苦労しているという話をよく聞くからね。日本人をやっていると、相手と普通に会話ができると、「それぐらいできるだろう」って勘違いしちゃうんだよ。

 魔法も大事だけど、学力向上も大事なんだ。





 変わっていく村を見ると、感慨深いものがある。

 ここまで来た。そんな思いだ。

 何年もかけて積み重ねてきた集大成なのだから、何も感じない方がおかしいだろう。


「長! これ、上手くできた!」


 僕が川辺でしんみりしていると、信綱が大きなガラス球を持ってきた。

 見ると中に気泡が無く、色もやや黒味がかかっているけど透明だ。これまで作られてきたガラスの中では一番よくできている。


「すごいね。これなら結構大きめの魔法も使えそうだ」

「長に使ってもらえるような物、あと少しで作れる。俺、頑張る!」


 靴で難航している蔵人と違い、信綱の方は順調に前へと進んでいるようだ。

 このあたりは魔法による力押しができるかできないかの差のような気がするよ。





 しばらく話していたけど、テンションが上がった信綱は次のガラスを作るために工房へと戻っていった。



 一人になり、見上げた空はどこまでも青い。

 この空は地球のどこにも繋がっていない空で、連れてくるフレンドもいないから日本人は僕一人。


 だけど、僕は独りじゃない。

 作り上げてきた村の中を、みんながいる場所を。

 僕は今、歩いている。

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