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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
終章 アンサー
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残るものは⑥

 MOの中身を確認したけど、CDと中身は一緒だった。


 で。

 肝心の中身だけど、アルバムの電子データとその写真データを使った音楽付きスライドショー用のファイルだった。

 あと、メモ帳が1つ。


「何で隠してあったんだ、これ?」


 メモ帳にはこのCDとMOを作った会社の名前と連絡先があるだけで、これだけだと僕には何が何だか分からない。

 その会社を調べてみる事にした。





 調べてみると、その会社は他の大きな会社の子会社になっており名前が変わっているというアクシデントがあったものの、電話番号は変わっておらず、なんとか当たりを付ける事ができた。

 愛知県の一宮にあるその会社は写真の電子データ化を請け負っており、そのついでにスライドショー用のファイル制作もしている。



 そして細かく説明を読んでいくと、父さんが何でそんな物を作ったのかが見えてくる。


「ああ、もう。気が早いんだよ……」


 目に涙がにじむ。

 鼻をかんで、こみ上げてきたものを抑え込む。



 スライドショーは、結婚式用(・・・・)のものだった。


 僕が大学を卒業して、就職して。

 その先にあるイベントは、やっぱり結婚だ。


 だけど世の中にはできちゃった結婚というのもあるし、子供ができればすぐにでも式をって話になりかねない。

 実際、従姉が18歳で子供を作り19歳の直前に式を挙げていた。

 父さんは同じ事を僕がしないか心配していたのかもしれない。実際、恋人はいたからね。僕の事を信用しているかどうかではなく、親として備えたかったんだろう。



 当たり前だけど、当時の僕はちゃんと避妊をしていた。

 する時にコンドームを使うのは男として最低限のマナーだと思うし、安全日だとかそういう曖昧で確実性の無い話は信用しなかった。恋人もそれは徹底していたよ。

 収入の無い学生が子供を作るなんて無責任だからね。

 基本目標は結婚してから。せめて卒業して、就職が決まってから。そう決めていた。


 子供を作る気なんて、全く無かったんだよ。

 欲しいか欲しくなかったかで言えば、欲しかったけどさ。



 あー、とも、うー、とも言いたくなるような感情がグルグルと僕の中で渦巻いて、パソコンの前で空を仰ぎ天井を見る。

 そろそろ見慣れつつある宿舎の天井は小綺麗で、たばこを吸わない僕が汚す事は無い。上の階の人が水漏れさせたり蜘蛛でも侵入すれば汚れるだろうけど、その兆候は無いね。

 そんなどうでも良い事を考えて、感情に蓋をしようとする。


 大学時代の恋人とは完全に縁が切れ。

 その後に付き合った小阪さんはヤクザの紐付きで。

 ゴブリンとは付き合う気など全く無い。


 親がそこまで結婚を意識していたというのに応えられないのが不甲斐なく。

 かといって「結婚したい」という義務感だけで相手を見ないなんてのも不義理であるし。

 もっと言えば結婚そのものから意識が離れつつあるんだよね。

 いや、将来とか考えれば結婚は絶対に必要だと思うけどさ。お見合いとかを否定したいわけでも無いよ?

 そもそも今の状況で結婚とか、考えられないのも問題だよ。


 どうしようと言うか、どうすれば良いとか、考えがまとまらない。



 これは僕に残された、親からの宿題という気がした。

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