残るものは⑤
それは、壊れた家から出てきた。
「新田さん、ちょっとこれ見て」
本格的な補修が無理でも仮補修だけでも先にやっておいてとお願いして、壊された家に人を入れたんだけどね。
そこで、作業員のおじさんが僕に金属の箱を持ってきた。
菓子箱?
「えーっと。これがどうしたんですか?」
「家の床から出てきたんだ。中身はMOとCD。
あと……便箋が」
贈答品の菓子箱には、CDとそれとよく似たMOと書かれたディスクが入っていたみたい。あと、手紙を入れる便箋。
MO?
そうやって僕が首をかしげると、おじさんは苦笑して簡単に教えてくれた。
これは20年ぐらい前に使われていたパソコン用のメモリーらしい。これはこれで問題が多いらしく、もうほとんど使われていないとか。
CDがあるなら、そっちだけでも良いと思うんだけど。
「昔のCDは経年劣化が酷いんだよ。MOも残したのは保険だろ。湿度にさえ気を遣えば理論上は50年持つんだったか?」
僕にはよく分からないけど、MOは長期保存用って意味なら優秀らしい。
よく見ると、箱には湿気対策に炒った米も入っていたよ。
まぁ、何でも良いけど。
僕はドライブを持っていないMOから意識を外して、CDと便箋に目を向けた。
CDはあとでパソコンで見るとして、今、確認できるのは便箋だね。
便箋の中にあったのは、数枚の写真だ。
全部、子供の頃の僕ら――僕と、弟妹――が写っている。それぞれの、七五三の写真だ。
他に花にも、手紙の類いは無い。
本当に、写真しか入っていなかった。
たぶん、父さん母さんのどちらかが残しておいたものだと思う。
末っ子の弟の七五三の写真があるって事は、8年ぐらい前のかな。8年前なら「なんでMO?」と思わなくもないけど。
そもそもアルバムの類いも普通にあるから、なんでわざわざこの箱に残してあるのかが分からない。
この写真も普通にアルバムに入っているはずだけどなぁ。
親の考える事はよく分からないけど、これも何かの思い出アイテムだ。
大切に仕舞われていたみたいだし、細かい事は中身を確認してからでもいいだろう。
中身は気になるけど、CDぐらいしか確認できない。
とりあえず、MOのドライブをネットで買わないとね。
売ってるかなぁ?




