残るものは④
あれから1週間が経った。
家の修理は、地元の建築業者には断られたけど、全国規模の大手に頼んで直してもらえる事になった。
「3ヶ月は見てもらわないと駄目ですね」
当たり前だけど、家の修理はすぐにできない。とても時間がかかる。
加えて、人手が足りないからと順番待ちになってしまう面もある。
これが新規建築であれば他所で作った部屋を組み付ける方式が使えるのだが、今回はそれも使えない。
だから、着工まで3ヶ月は待たないと駄目らしい。
これはどの会社にお願いしても同じ事だった。
放置すると悪化するので、現状維持をする為の簡易工事まではすぐにやってもらったけどね。今はそれが精一杯。
家を直す事自体は可能。希望はちゃんと残っている。
そんなプロの意見が僕には嬉しかった。
お金はしっかり取られるけどねー。
しばらくはゆっくりしよう、地盤を固めようという事で、ステージ4の探索は横に置き、EPを稼ぎつつ村を広げる事にした。
ステージ3のクリア報酬で土地を2倍に広げ、生産関係も強化したよ。
人が増えればできる事が増える。
あとはそれをEP収入が無くても維持できる体制を整えていくだけだ。
土地は増やしたけど、海や山までは増やしてないよ。
水源と農地ぐらいかな、追加したのは。
そもそもサーヴァント村は農業への依存率が少ないので、もっと農地を増やさないと駄目なんだよね……。
米は大変だから諦めるとして、ジャガイモ以外に小麦とかトウモロコシとかを作らないと駄目だと思う。
「長様。日本への派遣はいかがなさいますか?」
「しばらくは様子見、と言いたかったんだけど。可能な限り送ってくれって言われたよ」
人口を増やし、日本に派遣するという話は絶賛継続中。
今回の同時多発テロ事件で、ゴブリンの派遣は一旦停止になるかなって思っていたんだけどね。驚いた事に、首相が「日本はテロに屈しない」というスローガンで加速させる方向で話が進む事になった。
もともとオーヴァーランダーの始まった最初期に、大量の死者が出て日本中が人手不足だったからね。その人手不足を解消する為にも必要な事だったんだろうけど。
当たり前だけど、国内の反発は凄い。
そもそも人が足りないのだから職を奪われるといった事は無いんだけど、中国で起きたテロ事件が尾を引いているので不安が大きいんだ。
そしてオーヴァーランダーそのものを規制するべきだって話も少なくない。
下手にオーヴァーランダーを規制すると、回復薬とかで日本円が海外へ流出するから、とっても困るんだけどなぁ。そこは考慮してもらえないみたいだ。
そんなだからプレイヤーへの風向きも悪くなりつつあるので勘弁して欲しい。
完全にとばっちりだよ。
ま、何も気にせずゴブリンを派遣するんだけどね。
下手に何もしない方が事態が悪化するだろうし。
少数で非力なままよりも、警戒されようが多数派を目指すのが一番だ。
その中に僕の居場所ができればベストだね。




