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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
終章 アンサー
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残るものは③

 立ち上がったなら、お仕事をしなきゃいけないんだろうけどね。

 今回のアタックは早々に終えて、すぐに日本へ帰った。


 本来ならガッツリ稼ぐんだけど、今回は持ち込みの靴とか服とか、そういった装備品が足りない。

 装備不十分では戦闘の難易度が無駄に上がるし、そんな事をする理由はないからね。こんな時は帰ったほうが良いんだよ。





 日本に戻った僕は、ベッドに寝かされていた。

 見知らぬ部屋なので、医務室かな? ここは。



「気が付かれたようですね。大丈夫ですか?」


 医務室の担当医だろう。初老の男性医師が僕の検診をしていた。

 心音を聞いていたらしいそのお医者さんは、僕が起きた事に気が付き診察を止めた。


 簡単な質問をしてくるけど、僕に気を使って核心的な話、家の件については触れようともしないのが分かった。

 気遣ってくれるのは嬉しいけど、すでにそれは誾たちと乗り越えた話だ。もう、大丈夫なんだよ。


「大丈夫です。状況はきちんと把握しています。

 ですから、家に行っても、いいでしょうか?」


 僕はさっきまでアタックをしていたことを告げ、そこで気持ちの整理がついたと説明する。

 お医者さんはもう数日分の時間が経っている事を理解し、一人で行くのは危険だから、付いていく人がいれば構わないと限定的な許可をくれた。


 僕は心の中で、もう大丈夫だからと呟いて人の手配をするのだった。





 僕の家は、ヤクザの襲撃に備えて色々と仕込んであった。


 例えば警備会社との契約であったり、そこから勧められて購入した防犯設備。

 家の敷地と道路の間に少し広めの水堀を作り、更に段差を作って車の侵入に備えてあったり。

 しっかりした造りの壁で物が投げ込まれるのを防いでもいる。空き巣などはそう言った壁のある家を狙うと言うが、電気柵を壁の上に付けてあるので侵入そのものが難しいだろう。


 家の中も消火用にお高いスプリンクラーとか、防弾ガラスとか。民家にふさわしくない物を購入し、設置してある。

 普通の家は、エアコンに対毒ガス用の換気システムを組み込んだりはしないだろう。



 でも。

 そこまでやったお家が、壊されていた。


 小型の、投擲に適した爆弾が2個、使われたらしい。

 凄い音がしたとかで、近所、と言っても100mぐらい離れたところにあるお隣さんの所でもはっきりと爆発音が2回とも聞こえたというから相当だ。


 道路と庭を遮る壁はひびが入っただけだけど、家屋の壁が壊され、ガラスが割れなくても窓が吹き飛び、庭には大穴が開いていた。

 家の中も、2回目の爆弾で大きく壊れており、庭に面した応接間はもう使い物にならない。廊下を挟んであるトイレまでが玄関先から見えている。


 僕は崩れ落ちそうになる体に力を入れ、自分の足で体を支える。



「これなら、大幅なリフォームだけで済みますね」


 一緒に来てくれた警備会社の護衛の人は、家の惨状を見てそう判断した。

 僕にはよく分からないけど、1000万円とかかかるだろうけど、彼は、この家は直せると太鼓判を押してくれた。


 あまりに酷い光景を見て泣きそうになったけど、それでも希望が残ったことに僕は胸をなでおろす。

 お金はまた稼げばいいし、1000万円は現実的に対応可能な額だ。倍の2000万円でもなんとかなる。



 安心したところに、ギルマスから一つ、朗報が届いた。

 テロリストの確保に成功したらしい。


 テロリストは僕の家以外にも日本中で同時に襲撃を仕掛けていたらしく結構な混乱が起きた。

 ただ、それで警察も全力を投入し、政府経由で自衛隊に協力要請をするほどなりふり構わず動くという結果になり、テロリストはあえなく御用となったようだ。


 そうそう。今はSNSへ情報提供を呼び掛けるなどの選択肢もあり、民間の情報も駆使して追い詰めたのだとか。

 岐阜ローカルのタグにも追跡情報が大量に貼られている。

 ゴブリン反対派が肯定派よりやや多いご時世とは言え、さすがにテロリストは御免だという事だね。 


 ほんの少しだけ、僕は世間って奴に安堵したよ。

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