残るものは①
ホームにできた村は第2村を作るほどに拡張し、人口も順調に増やしている。
ステージ4は湖と小島という組み合わせだったので探索はほぼストップ。今は造船を頑張らせている。
そうそう。
彪の毛皮だけど、これを使う事で透明化対策のアイテムが作れることが判明した。
ボロボロだったそれをどうしようかな、と考えていると、≪錬金術≫スキル持ちのゴブリンが毛皮を使って透明化を打ち消す道具に作り替えたのだ。
粉末状のそれは、小さい袋などに入れて相手にぶつけると、当たった相手が透明化できなくなるという優れもの。
罠として使うのは今のところ難しいけど、これを当てれば簡単に彪を狩ることができるので、キメラ戦の時にこれがあればと思ってしまった。
正直、≪錬金術≫の事は完全に頭から消えていたよ。残念。
アタックがそろそろ160を数えそうだというところ。
また≪神託≫の出番かな、などと考えているときに事件が起きた。
「新田さん! 大変です!!」
そのときの僕は昼からのアタックに備え、荷物を準備していた。アタック1時間前からスマホの電源は落としている。
そこにギルドの男性職員さんが慌ててやって来たのだ。
連絡が付かなかったので、直接だ。
よほど慌てて走って来たのか、息が乱れているし、汗もかいている。
「おち、落ち着いて聞いてください」
「え? あ、はい」
ギルドの職員さんは、お前が落ち着けと言いたくなるほど息も絶え絶え説明を始める。
「新田さんのご自宅が襲われました。30分前の事です。
犯人は現在追走中で、捕まえるのも時間の問題ですが」
職員さんは僕の様子を窺う。
少し間を置き、意を決しこう言った。
「ご自宅は、大きく損壊し、修復は難しいとの事です」
僕はその言葉を聞き、意識を失った。
「長様! お目覚めですか?」
目覚めると、すでにアタックは始まっていた。
気絶した状態でアタックが始まったのは初めてで、周りにいる皆は、心配そうに僕を見ている。
そんな中で医療の心得がスキル的にだが、一応はある誾が僕に声をかけた。
何があったのか。
僕はそれを思い出そうとして、気分が悪くなり吐きそうになった。
頭では理解できているけど、感情が追い付かない。
だって、それを理解してしまえば、いろいろと取り返しがつかなくなりそうだから。
危険があると思ったから保険を掛けた。
念のために大事な物は運び出した。
けど、家そのものだって大事なんだ。
思い出が詰まっているんだ。
簡単に無くしたくないものなんだ。
だから。
僕は心配する誾にすら、何も答えられなかった。




