反省と世の中の変化
日本に戻ってきても、気分は晴れなかった。
ステージ3のクリア。
それ自体は喜ばしいけど、結局は仲間を死なせてしまった。
つまり、僕はボスに対し不十分な準備で挑んでいたって事だ。それはとても情けない事だ。
そして、僕の命を危険に晒す、愚かなことでもある。
じゃあ、なんでそんな事をしたのか?
家を出ていて、ストレスが溜まっていた。
テロリストに狙われているという不安もある。
魔法がらみで孤独を感じていたっていうのも理由だろうね。
つまり、今の僕は正常な状態じゃあ無い。焦っていた、八つ当たりしたかった、そういった不安定で攻撃的な感情に引きずられていたんだろう。
しばらくはまともな判断ができないんだろうね。
それを認めないといけない。
しばらく、大きい決断はしない方が良さそうだ。
僕がそんな結論を出していると、日本での数日で状況がさらに変わっていく。
まず、テロリストどもがかなり捕まった。
長野のゴブリン受け入れ先になっている老人ホーム、そこを襲おうとして失敗したらしい。
ゴブリンたちの、手によって。
ゴブリンたちは「自衛するときは魔法を自由に使っていい」と言われていたこともあり、テロリストたちを完全に制圧した。そしてテロリストを一人も殺していない。
もともとモンスター相手に殺し合いを経験していたゴブリンたちである。人数的にも戦力的にもテロリストごときでは敵わないものがあったのだから当然だ。
この鮮やかな手並みを見ると、政府側は最初からこのつもりだったんじゃないかと邪推したくなる。
情報を中途半端に隠すことで反抗勢力が襲う場所をある程度指定し人的被害を軽減、戦力になるゴブリンを連れてきているので守りも完璧。テロリストがゴブリンのいるところを狙っただけで勝利が確定する。
囮作戦に巻き込まれたというか、危険組織を排除するために早い段階でゴブリン派遣計画を立てられたんじゃないかな。
失敗すれば批判が出るし、人的被害が出たら最悪だ。そう考えると、もっと時間をかけた方が良い気もするけど。
でも、結局はそういったテロリストどもを物理的な意味で排除しないといつまで経っても話が進まないのも事実だし。話し合いでいなくならない連中だから彼らはテロリストなんだし。
まぁ、みんなに被害が出てないからどうでもいいんだけどさ。
僕も早く帰れるようになるし。
政府による僕の公務員化計画は、プレイヤーとしての活動を認める事が権利として認められるという譲歩によって、「引き受けない」という考えがちょっと揺らいだ。
組織に所属する、そういう意味では良い話だからね。
僕の状況を話し、すぐに結論を出す気が無いと返答したけど。どうしよう?
あと、魔法使い関連は政府が何か法案を作って年内に可決されるのを目指すという発表があった。
細かい話は表に全然出てないし、かなり揉めているみたいだけどね。放置できないというのだけは与野党ともに一致したらしいよ。
草案も特に無いらしいけど、どうなることやら。
公務員になる話も、これが決まってからでいいかな。
あ。
アメリカの方はすでに魔法使いを登録制にする草案が発表されたらしいけど、日本じゃ細かい話は分からないし、頑張って調べてみようかな。
日本のルールってこれを参考にするだろうから、とりあえずの基準になるよね。
変わる日常の中で、僕は世の中の変化をその程度に考えていた。




