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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
終章 アンサー
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ステージ3 ボス戦 惨敗

 こっちに連れてきたプレイヤーを部隊長に据えたゴブリン軍団。

 それが政府の出した基本構想なんだろう。


 犬猫などと同じく、普通の人にゴブリンの顔など区別はつかない。犬猫ならまだ毛並みで判断できるだろうけど、ゴブリンは無毛だからねー。犬猫より難易度が高いと思う。

 そしてゴブリンの顔の区別がつくのはそっち系、僕らのようなテイマー系のプレイヤーぐらいだ。僕ら以外が部隊長になっても隊員の顔の区別がつかないとか、普通に考えられる。選択肢はほぼ無いと思っていいかな。

 まぁ、ゴブリンの中からチームリーダー、班長のような立場の者を選び、部隊長の負担を減らす方法もあるけど。その場合、チームとしてのまとまりは弱くなるかな?

 そうならない為にも、政府としては一人でも多くのプレイヤーを確保したいだろうね。


 頑張って交渉すればプレイヤーとしての立場を確保しつつ公務員をやるのも可能だと思うけど。

 ただ、地盤の弱い今から公務員をやると、他の公務員から贔屓だなんだと言われて攻撃されると思うんだよね。僕は自分からそんな苦労を引き受けたくない。

 もしも政府の考えていた通りのスパンで状況が推移していったなら、ある程度は地盤が出来ているだろうから、そんな問題が起きなかったと思うんだけどねー。



 今のところは何を言われても公務員をやる予定はない。

 他の人は知らないけど、これまで話してきた感じでは、何人かは引き受けるんだろうな。

 そんなふうに、僕は現状を認識していた。





 アタック140回目。


 そろそろ僕も、ステージ3のボスと戦おうという気になった。

 準備が整ったのだ。


 いや。正しくは、戦力の底上げ以外に今出来そうなことが無くなった、かな。

 結局、ボスの姿は全く見なかったし。



 僕らは多くの荷物を持って、30人ほどでボスのいる場所、その近くまでやって来た。

 蜂自体はそこまで恐れることは無いけど、その周辺に彪が潜んでいる可能性があるし、他にも何か仕掛けがあり、僕らの移動を妨げるかもしれない。

 だから戦力と生産力と機動力、それらのバランスを考え、出せる最高戦力でボス戦に挑戦することにした。


 決戦の地は山の中腹、足場が斜面でまばらに木が生えている場所だ。

 もしかすると上から援軍が来るかもしれない、岩でも転がされるかもしれない。下から援軍が来るかもしれない、煙で攻められるかもしれない。そういった想定もしておきたい。

 時間はかかるけど、まずは周辺のモンスターをどうにかするところからスタートする。信綱たちは割とそのまま戦っていたらしいけどね。

 そうそう。蜂の巣も僕抜きで先に処理しておいたよ。



 1日かけて周辺の掃除を終えた僕らは、その翌日にボスへと挑む。

 倒せるモンスターは事前に全部排除した。

 いるであろう、ボスだけが僕らの敵だ。


 僕らは周辺を警戒しつつ、魔法陣へと向かう。

 周辺に敵影無し。

 不意打ちを警戒して周辺を仲間たちで固めているけど、僕を含め誰もモンスターの姿を見ていない。

 ほっとしつつも、完全に気を抜くことはしない。



 魔法陣まであと300m。

 異変はそこで起きた。


 僕の前にいたゴブリン。

 20mほど先行していた彼の首が(・・)、いきなり落ちた(・・・)

 他にも数人いたんだけど、足を止められなかったゴブリンの、信綱らの首が落ちた。


 この時点で、死者5人。



「は? っ! 全員撤収!! 前方にけん制しつつ逃げろ!!」


 僕は死んだ仲間の姿に、殺された仲間の血で、思考が止まってしまった。

 が、すぐに「逃げ」を選ぶ。

 このまま戦う事は出来ない。


 仲間の誰かの起こした風が、放射された炎が、撃ち出された氷の礫が“敵”の姿を浮かび上がらせる。

 敵はおそらく、合成獣(キメラ)のようなもの。

 ここにきて、最悪の番人がその威容を露に――――しない。砂埃やゴミなどが透明な体にまとわりついて目印になってもすぐに周囲の景色と同化し、見えなくなる。


 彪の姿消しの能力に木蛇の周辺同化能力。霧狼や火熊の腕と爪。背中にある灰鷹の翼がどこまで意味があるかは知らないけど、とにかく危険すぎるモンスターであると感じた。

 体の大きさが体高2mはありそうなので、それだけでも十分脅威なんだけど。ゾウか、こいつは。



 キメラは僕らを追いかけてくるけど、僕は必死に逃げる。

 仲間は時間稼ぎで後ろに向けて魔法を使うけど、それは自分の足を遅らせる程度の効果しかない。

 状況はかなり拙い。


 だが、そんな魔法よりも誰かがまとめて使った催涙弾が効果を発揮した。

 使ったのは誾だ。

 まだ生き残っていた誾が、自分の持っていた催涙弾をばら撒いたのだ。

 後ろで犬が鳴くような悲鳴がする。



 僕らはなんとか山を下り、撤収に成功するのだった。

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