政府の思惑
日本に戻ると、お昼のバラエティ番組で「プレイヤーの魔法解禁!」という話が出ていた。
TV業界はさすがに仕事が早く、魔法が使えるプレイヤーを番組出演させていて、やらせ疑惑回避の為か上半身裸のプレイヤーさん(男)が指先から火を出していた。
ブースターの杖を使えないのに、それでも指先から火を出せる事に驚かされた。
で、僕も試してみたけど、僕は杖無しだとほぼ気のせい程度の出力しかなく、杖有りで紙を黒く焦がすぐらいの出力しかなかった。
たぶん、あのプレイヤーさんは僕より≪火魔法≫の熟練度が上なんだろうね。もしくは昨日からずいぶん頑張ったとか。
今後どうなるのか、番組はそうやって締めくくっていた。
魔法が使える事は、これで全世界に知れ渡ったと思っていい。
今後もニュース番組やネットから情報が拡散されるだろうし、誰が魔法を使えるといった話もラ〇ンなどでバレていくだろう。プレイヤーである僕の情報も流れている、はずだ。田舎にプライバシーなどありはしない。
こういう時、ご近所さんに他のプレイヤーがいないというのは心細いね。
学区が違うぐらい離れれば、きっとプレイヤー仲間もいるはずなんだけどね。
残念だけど、僕にそれを知る方法が無いんだよ。
地元の消防団について調べてみた。
細かい話をすると、地元にあるのは消防団そのものではなく、地区ごとの分団らしい。
年末が忙しいのと、なんか大会が毎年あり、何年かに一度は大会に出なきゃいけないってのが大変みたいだ。防災訓練とかの準備・片付けの手伝いとかもあるねぇ。
他は夜中に集まってパトロールをするぐらいであまり長時間の拘束はされない。ただ、土日はたまに昼飯時に拘束されるみたいだ。
……表に出ている情報では、そこまで大きなデメリットは無い、かな?
かなり縦社会で年配がウザいという愚痴であふれかえっているけど、そういった組織の方が見捨てられることが少ないと見るべきか、逆にイジメの対象にされるかもしれないと警戒すべきか。
参加するのに二の足を踏んでしまう。
少なくとも、今、参加しているメンバーを見ただけでは安全かどうか分かりかねるよ。
そもそも調べる方法が少ないっていうのも問題だけどさ。
今のところ、参加しようと言うには僕のガッツが足りないね。
『アメリカ大統領、魔法警察の設立をツ〇ッターで示唆』
『EU、魔法使いを登録制に』
『さっそく起こった魔法犯罪、パチンコ店でボヤ騒ぎ』
そうやって外に出れない暇をネットの調べもので潰していると、スマホにメールが届いた。
差出人はお役人の工藤さんからだ。
「えーと。ゴブリンを自警団員にする?
え?」
日本語が喋れることと魔法が使える事が前提。
あきらかに介護だけなら過剰な数のゴブリン。
そのうち建設現場にでも連れて行かれるんだろうと、そんな事を考えていた僕にとっては予想外の要請。
それはゴブリンを主力とした、魔法犯罪に対抗する組織設立の提案だった。




