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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
終章 アンサー
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彪狩り

 今後のことを考えるとどうしても気分が重くなるけど、それでもやる事もやらずにいてはご飯を食べられない。

 僕はいつも通りの山歩きを、誾たちは蜂の巣周辺にボスがいないかを確認する。

 もし今回もボスらしきモンスターがいなければ、次回に僕が蜂の巣の近くにある魔法陣まで行くことになる。ボスの出現は(プレイヤー)がトリガーって事になるはずだからね。


 これまでのように、せめて何と戦うか分ってから挑みたいものだね。

 そうじゃないと準備ができないじゃないか。



 ボスがいない可能性?

 まず無いよね。

 そんな甘い想定はしないよ。





 そんな訳で、今回はボス手前の休憩所からちょっと足を延ばして周辺探索をすることにした。

 ボスの方には行かないけど、虎狩りにでも挑んでみたいからね。



 正直、虎と戦うのにはワクワクしているんだ。

 大学にいた頃に読んだ漫画でね、古代中国の皇帝が戦意高揚のために一人で虎を倒すシーンがあったんだけど。僕らにそれが出来るかどうかって考えると、ちょっとテンションが上がる。


 命の危険があるのは分かっているし、身体能力で僕らが大きく劣っているのも忘れていないよ。

 漫画みたいに肉弾戦をすれば負けるだろうし、そのためには先手を取らないとダメだ。

 1対1など、論外だろう。


 ただね、僕にとって虎狩りはロマンなんだよ。

 リアルとファンタジーの境界線上というか。実際はただの害獣退治らしいけど、英雄英傑の試練っぽいのがいいんだ。


 ……嘘です。そう言ってテンションを上げないとやってられないだけなんだよ。

 人、それを現実逃避と言う。





 天空なんちゃら拳の某ロ〇兄さんに駄目出しをもらった気分になったけど、虎狩りそのものは良いEP稼ぎになりそうだから本気でやる。


 虎狩りは、虎を発見すること自体が問題らしい。

 虎は狩りをするために水場や草むらなどに身を潜め、1日の大半を動かずにいるらしい。移動は狩りのスポットを変える時ぐらい?

 とにかく動かず、隠れて不意を打つのが虎のやり方だ。

 そんな隠れるのが得意な虎を見付けること自体、とても難しい。


 僕らの場合は魔法を使うのか、周囲にとけ込むモンスターの(ひょう)が相手になるので、更に難易度は上がるだろう。

 ドローンがあればなんとかなるかもしれないけど、あれは信綱らのパーティに貸し出しているので、僕らの手元には無い。

 いや、あったとしても厳しいか。木々が邪魔をするからあんまり変わらないか。



 そんな彪を狩るために、僕らは囮用のアヒルを数匹、用意してみた。

 ぶっちゃけ、育ててはいるけどあんまり食用にも向かないし、卵も、ねぇ。価値があるのは羽毛ぐらいだ。

 ちょっと間引きも兼ねて彪の囮にしてしまおうと思っている。


 僕らがアヒルを放つと、餌が少なめだったこともあり、アヒルたちは魚を求めて最寄りの川へと向かった。川の場所が分かるのは本能かな?

 僕らは見失わない程度に距離を置き、その後を付けた。声がするので大丈夫だと思うけど、そこら中に生えている草ですぐに目に映らなくなる。


 アヒル御一行は川の近くで何かを見つけ、ついばみ始める。

 その様子をしばらく見ていると、アヒルの1羽がいきなり体の大半を失い、食い殺された。


「散開! 攻撃開始!」


 事前情報通り、ほとんど目に見えない虎がアヒルを襲っている。

 周囲への溶け込みは完ぺきではないのでぼんやりと輪郭はつかめるけど、本当に見えにくい。


 彪は僕らに気が付くと、すぐに逃げようと走り出した。戦力分析が早い。

 けど相手が振り向く間に、こちらも魔法の射程圏内へと近づく事に成功している。すぐに魔法が放たれた。



 結果だけ見れば、彪を狩るのには成功した。

 やっぱり虎っぽい生き物でよかったし、周囲にとけ込む謎機能を持つ毛皮も入手している。――ボロボロだけど。


 しかし、彪を狩って思ったんだけど。


「こいつって、一発屋だよね。そこまで強くないし、群れないし。何が脅威なんだろ?」


 ステージ3のモンスターとしては、微妙じゃないかな?

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