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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
終章 アンサー
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冒険しない冒険者

 冒険しない冒険者とはよく言ったもので、リスクを避けて確実に「実」を取る姿をそう揶揄したものだ。

 ただ、僕はプレイヤーであり、リスクコントロールも含めて、冒険は仕事でやっている。

 僕が死ねばすべてが終わりのこの世界。みんなの為にも自身のリスクを最小限に抑える義務があり、安全策を講じるのは間違いなく正しい。


 でもね?

 みんなに任せきるのは駄目だと思うよ?

 ほら、ボス戦はプレイヤーたる僕がいないとダメなんだから、僕が前線に立ち続けるのは必須なんだ。


「駄目です。

 ボス戦で必須であるのは、立ち合いまでです。

 戦争でも総司令が前線に立つのはありえません。長様は後ろでどっしりと構えていて頂ければいいのです」

「長――信じろ」


 僕の些細な抵抗はあっさりと潰え、信綱たちがルート確保に向かった。

 僕はお留守番――もとい、探索を続行する。

 せめて、僕らは霧狼を手に入れようと思う。





 おいてきぼりとは言え、途中までは僕らも一緒に進む。

 途中の、休憩拠点を造るためだ。



「カレールー、持ってきたよー」

「「おぉーー」」


 僕らと信綱らのチーム、合わせて20人以上の料理を作ろうと思うと、割と大掛かりになる。


 途中で狩った木蛇の白焼き、僕は要らない。

 霧狼は食べるよ。カレーに使うなら僕はこっちの方が好きだよ。

 かば焼きのタレでもあれば木蛇でもいいと思うんだけどね。今度はそっちを持ってこようかな。



 拠点づくり自体はみんな慣れたもので、人数が多くても役割分担がしっかりできるので、1日で終わった。

 EPは余裕があるのでそのまま完全固定、これで壊されても安心だ。

 安普請で改築が必要になったら、その時はもう一度固定しなおしなんだけどね。


 そして出来た設備は何気に、昔よりも豪華である。

 僕らの≪建築≫スキルとかが上がった結果だ。


 20人が雑魚寝できる屋根付き床ありの簡素な建屋に、見張り台、土壁、空堀、馬防柵、鳴子といった防御設備。櫓は無いけど、これだけあれば十分だ。

 何か来てもすぐに分かるし、しばらくは侵入を防げるだろうから寝ている全員が起きて戦闘態勢を整えるぐらいはできる。


 作っている最中に、さすがにやり過ぎかもしれないと思ったけど、まぁいいや。 



 寝ずの番は僕らのチームで受け持ち、信綱らのコンディションを整える事を優先した。

 そのおかげもあり、ぐっすり寝た信綱たちは翌朝早くに少しでも遠くに行こうと旅立って行った。



 僕らは2交代で二度寝である。

 寝ずの番をした後は眠いし、今日の所はそこまで急ぐ事も無い。

 なにせ、一番の探索目標であった次ステージへの道は分かっているんだ。心に余裕があるので、万全を期すぐらいの時間も取れる。


 そうやって昼までゆっくり時間を使い、みんな元気になったところで霧狼狩りだ。

 昨日のうちにドローンで周辺は偵察済み。霧狼がいそうな場所へと僕らは向かう。



「まずは≪風魔法≫最大で。合わせてね。

 カウント10、9…………2,1――ゼロ!!」


 霧狼のテリトリー、霧の濃い場所で≪風魔法≫を使う。

 霧を吹き飛ばし、視界を確保する。


「1時方向! 数7! 撃てぇっ!!」


 霧の濃さで大体いる場所が分かる霧狼は、木々というもう一つの視界を遮る物(ブラインド)が残るものの、見つけるのが困難という事はない。

 なにより、一番のアドバンテージを失い戦力が大幅にダウンしている。獣の俊敏性は残っているが、見えていればどうとでも対処でき、脅威ではない。遠距離攻撃のいい的だ。

 風に怯んでいたことも手伝い、初手から僕らが圧倒的に有利となる。


「盾、構え! 防げ!」


 遠距離攻撃で数を削り、それでも倒しきれなければ盾で受け止める。

 盾は機動隊のライオットシールドをイメージした大きなもので、正面からの突進攻撃は完全に防ぎきれる。


 狼の方は一撃入れた後はすぐに離脱され、取りつかれるという事はない。

 なぜなら、足を止めれば後ろの盾無し、槍を構えたゴブリンが動きが止まったところを突き刺して終わりなのだ。飛び掛かった後は背を見せ距離を取るしかない。

 その背中に魔法が飛び交い、数を減らす。


 早ければ半分になったあたりで、遅くとも全滅する前に何頭かは逃げるので、全部相手にする必要はない。

 今回は5頭目が瀕死になったところで戦いは終わった。



 霧狼が逃げて行った方角を見て、僕らは次の目的地を決める。


「じゃあ、追いかけて巣穴を探そうか」

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