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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
終章 アンサー
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自分の結論

 家に戻った僕は、これからの事を考えていた。



 恋人が裏切り者だった、かもしれない。

 いや、「かもしれない」は無いか。敵と繋がっていた内通者(スパイ)、僕を籠絡する為のハニートラップ。家に入ったあと、土地権利書を盗み出すトロイの木馬か。どんな目的であるにせよ、僕にとって害悪でしかない。

 これ以上の付き合いを望めない、敵対者だ。


 これでもし国の調査が間違っていれば笑い話にもならないだろうけど、さすがにそれは楽観視が過ぎる。

 あの工藤さんが国の関係者であるのは間違いなく、その彼がわざわざ僕に忠告する所まで情報を集めたのだし、確証があると思っていい。憶測であれば、その様に言っただろう。


 僕は守秘義務に従い、国にゴブリンを貸し出す事について彼女には何も教えてこなかった。

 僕がこの情報を得られたことは、まだ敵に知られていないだろう。





 彼女をどうするのか、そこが悩みどころだ。


 別れるのは当然だ。これ以上の付き合いはマイナスにしかならない。

 だが困った事に、彼女は今のところ僕に対し敵対行動を起こしていない。

 よって法律で裁く事ができない。

 私刑(リンチ)など、僕の主義に反する。暴力行為はあまり好んで使いたい手ではないし、やったら僕が犯罪者だ。選択肢としてはあり得ないだろう。


 いや、僕との付き合いがヤクザからの命令だったとして、失敗した彼女にはペナルティが科せられるだろうか?

 敵であるヤクザに処罰を期待するというのはどうかと思うけど、何も無いという事は無いと思う。


 あとは彼女自身も被害者の可能性だ。

 借金を理由に、僕と付き合えと命令された。本意では無いが、嫌だが、仕方がないと折れていた場合。

 ノリノリで僕をだまし金を奪おうという悪女ではなく、家族を人質に取られて他に手段が無かったとしたら、許すとまでは言わないけど、情状酌量の余地があるのではないか。

 これまで話をしてきた彼女への印象を考えると、あまり悪い人には見えない。


 それに実行犯である彼女よりも、その後ろにいる首謀者のヤクザへダメージを与える事こそ、重要ではないだろうか。

 末端をどうにかする事に固執するのは本末転倒かもしれない。



 自分でも意外だったけど、僕は小阪さんに同情している部分がある。

 僕みたいにオーヴァーランダーで金稼ぎをできれば違った道があったかもしれないけど、女の子にそれを強いるほど、必死になれと言うほど僕は鬼畜ではない。

 金に困ってしまった。それは僕も一度は通った悩みだから、分からなくもない。


 憎い、という感じはしない。

 ただ、家を守り切れればそれでいいという思いがあり、小阪さんをどうこうしようというのは手段に過ぎない。


 そこまで思考が進んだ事で、僕は結論を出した。


「小阪さんとは別れる。それ以上、僕から彼女へ特に何かするという事はない。

 ヤクザの方には国に対処してもらえないか相談する」


 付き合い続けるのは、彼女にどんな事情があっても、もう無理だ。別れる理由もちゃんと説明する。

 そこまではハッキリさせるけど、僕から何かする事はしない。ただ、別れ話を切り出した事で何かしてくるようであれば全力で潰しに行く。


 しばらくは警戒しないと駄目かな。買い出しに行くお店も変えよう。





 こんな事になってしまったのは悲しいけど、それを飲み込んで生きていくしかない。

 それが僕に出来る、精一杯だ。

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