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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
クリエイション
259/290

彼女の秘密

 僕らは拠点を作らないけど探索範囲を広げつつ、次のステージへの道を探す。

 東へ西へと向かう先を変え、ドローンも活用しつつ地図を作る。


 信綱と誾たちは洞窟を任せているので、この周辺探索には参加させていない。

 火熊と戦うのは大きな負担がかかるので、無理はさせたくない。


 なお、宝箱の方は探索時間を長く取ってしまう度に質が劣化するので、ステージ2の宝箱とは違いタイムアタックで質が向上するようである。

 とは言え、「質=赤い岩の大きさ」で、変化が無いのが残念なんだけどね。

 なお、宝箱を開けた時点で質が固定化されるので、持ち出したあとに劣化するという罠は無かった。


 それと、このステージには山羊がいるので、山羊の確保も合わせて行っている。

 火熊の数を増やした事もあり、土地はどんどん広げないと拙そうだ。餌の確保も含め、やる事がずいぶん増えている。


 そうだ。ゴブリンを15人も外に送り出す事で、村の運営に問題が出たりもしたよ。

 人が抜けた仕事は、誰かが替わりになる事は出来ても、誰でも出来る仕事であっても、結局は「替わった」事実一つで問題を起こす。

 「私が死んでも代わりはいるもの」とは世の中を知らない人間の戯言なんだなぁと、つくづく思ったよ。





 そうやって安定した状況で、134回目のアタックを終えた。


 次回は≪神託≫が使えるようになるので、洞窟の先の情報を貰うのか、それともストレートにステージ4への魔法陣の位置を聞くのか。どちらにしようかと迷っている。


 世界の危機の情報? 今のところ、あんまり興味は無いかな。

 100年先の滅びなんて僕には関係ないし。約100年後に何かあるなら、その時代に生きる人に任せてしまおうと思う。



 そうやって僕が「次」のことを考えていると、予定に無い来客があった。お国の使いで何度か顔を合わせた、いつもスーツ姿の役人さんだ。


「少々込み入ったお話があります。時間をいただけませんか?」


 ゴブリンの件では無さそうである。

 何の話だろう。

 僕は疑問を持ちながらも、好奇心から深く考えず、頷いていた。



 お役人さん、この人は工藤さんと言うのだが、彼がお話に選んだのは、近所の喫茶店である。防諜も何も無い席に座ったので、お国の機密とか、そういった難しい話ではなさそうでほっとした。

 工藤さんはブレンドを、僕はウィンナー(ホイップを乗せた)コーヒーを頼み、軽く唇を湿らせてから本題を始める。


「お話というのは、新田さんの交友関係です」

「僕の交友関係、ですか?」


 工藤さんはかなり意外な所から話を切り出した。ジャブになる世間話などをすっ飛ばし、僕を睨むような、強いまなざしを向ける。悪い事などしていないはずだけど、ちょっとビクビクしてしまう。


 しかし、僕の交友関係?

 言っては悪いが、今の僕って人付き合いはかなり悪いよ。

 恋人の小阪さん、冒険者ギルドのマスター、プレイヤー仲間数人。うん、大学にいた頃から考えると、桁が1つ違うよ。ヒッキーと大して変わらない付き合いの狭さだ。


「貴方の恋人の、小阪さんの話ですよ」


 何の話だろうと困惑する僕に、工藤さんは小阪さんの名前を出し、僕は少しだけ状況を理解する。

 彼女の交友関係か家族環境か。そちらに問題があるのだろう。親か祖父母あたりが北朝鮮の出身とかかな? 僕はその様に当たりを付ける。


「新田さんの立ち位置は我々にとって重要なのです。悪いとは思いましたが、彼女の身辺を洗わせて貰いました。

 その結果、彼女の来歴に、新田さんに伝えておいた方が良い、重要な情報がある事が分かりました」


 工藤さんは僕を睨んでいるんじゃなくて、僕に対し言いたくない事を言おうとしている。だから目がきつくなっているのか。彼の口がちょっとだけど「へ」の字になっている。


「彼女自身に問題はありませんでしたが、親が事業に失敗し大きな借金を作っています。その時に父親が闇金に手を出していまして」


 工藤さんの言葉に反応し、僕の心臓が嫌な音を立てた。


「その借金の借り元である暴力団が」


 ちょっと待って、そう言おうと思ったけど、口が動かない。


「貴方の家と土地を狙っていた組と、同じ系列の組織でした」


 そんなはずは無い。

 そう言いたかったけど、僕は何も言えずにいた。

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