小熊
生き返った信綱の新スキルなどを試し、やっぱり火と土関係だと分かったところで今回は終了。
全体的に能力が上がっているので、次は死なずに勝てるだろう。
火熊の毛皮はボロボロで使い物にならず、肉も表面は何度も攻撃したから血が混じった上に堅くなり、食べれそうに無い。
肉の中の方はまだマシだったとは言え、殺し方にも注意しないと、狩りの獲物として見るのはやめておいた方が良さそうだ。
と言うより、近接戦闘で戦う方が駄目なんだろうね。
聞いた話ではやっぱり近接戦闘になってしまうと言うけど、遠距離からワンショットキルが出来ればそれが最善だし。リスクとリターンの両面で。
あとは技術的難易度をどうするかだけど……足の速さで負けているとはいえ、誘い込むのとか、やりようはあるように思う。
そのあたりはもう少し相談をした方が良さそうだね。
信綱が死んでしまった事でいったん撤収してきた誾たちだけど、僕が信綱の能力確認をしている間にもう一度洞窟の方に行っている。
そして、そこで思わぬ仲間を得る事に成功した。
「抱えられるって事は、まだ赤ちゃんなんだろうね」
「はい。名前は何にしましょうか?」
火熊の小熊、入手しました。
体はまだ小さく、身長は60cmぐらいしか無い。誾が両手を使えば普通に持ち上げられるなど、まだまだ幼い、小さな熊。
この子もちゃんとサーヴァントに登録できたよ。
スキルの方は≪火魔法≫ではなく≪火吹き≫≪火纏≫≪火爪≫と、「火」に関係するスキルやアビリティをいくつも持っていた。
さすがにこの大きさの子供を戦闘に連れ歩く気にはならないので、当分村の中で飼育する事になるけど、いずれは僕らの中でも最大戦力になるんだろうな、と期待を寄せる。
リアルで考えると大人になるまで何年もかかるだろうけど、できれば1年ぐらいで育ってくれると嬉しいな。
ああ、ある程度育ったら、猪相手に狩りの訓練をさせると面白いかも。
こうして僕がやるべきことを終えて日本に戻るところまではいつも通りだけど、今回はちょっと違う。
「全員、準備はいいかな?」
「「はい!!」」
今回は日本に5人のゴブリンを連れて行くからだ。
戦闘向きではない性格をした、研修者向きの若い子たち。彼らが日本移住の第一陣となる。
日本語を喋れて魔法が使えるという条件は満たしている。
能力的には何の問題もない。
日本側の受け入れ態勢も万全、らしい。彼らには東海地方のとある寂れた村に移住してもらい、そこに作られた老人介護施設で人間と一緒に働いてもらう事になっている。
僕らからは第一陣だけど、他の人の所から送られたゴブリンが先に仕事をしているので、土台はちょっとは出来ているはず、だ。
不安が無いといえば嘘になるけど、きっと大丈夫。
今の時代はネットへの情報拡散とかすごいから、無茶なことはされないはずだ。国が裏切らない限り機密情報は漏らさないけど、国が僕らをだました後の対応はできる、と思う。
僕なんて日本では無力な一市民だから、本当はどこまで戦えるか分からないっていうのが本音だけどね。
あ。最近バタバタしているせいで顔を出してないけど、冒険者ギルドとももっと歩調を合わせないとダメだよなぁ。
何かあった時に頼りたいし、それなら普段から貢献しておいたり顔を出したりしないと、見捨てられちゃうからね。




