不吉な予感
たった2日では日本側の話に進展はなし。
こっちが出せるゴブリンの数も申告したし、そちらの問題も特に無くなっている。
まぁ、物だって言われてすぐ納品できないのはよくある話で、ましてや人材であれば「来てください」と言えば集まるわけでも無いらしいからしょうがない。
日本の政府が「最低」1000人のゴブリンを必要としていると通告する事で、僕らに安定したゴブ材供給の道筋を作るように促したと考えたのかもしれないね。
あとは時間をかけてゴブリンを連れてこれるようにするだけだ。
なお、言われたスペックを持つゴブリンを連れてくるのに必要なEPは割と少なめで250Pほど。
連れてきた場合は400万円が支払われるし、住宅の用意などその後の生活の面倒をある程度見てもらえるので、金銭的にはかなり美味しい。
扱いについては僕を含むプレイヤー達でローテーションを組み、たまに見に行く事になっているので心配は少ない。
僕の方からは後3日後に5人、13日後と23日後にそれぞれ5人と、合計15人を用意する事で話がついており、今はそれに必要なEPを貯めている。稼げなくなる可能性も考慮し、使わないように1250Pを残してある。
第一陣の日本に連れてくるゴブリンの選定も終わっているし、引き継ぎも済ませたから準備は万端だ。
いきなり15人抜くわけでも無いから、混乱は最小限に抑えられる、はず。
……最小限であって、ゼロじゃ無いのが痛いなぁ。
影響ゼロって言うのは絶対にあり得ないし、諦めるしか無いんだけどね。
はぁ。
アタック120回目。
靴が来たので、洞窟の攻略に向かう事にした。
と言っても、一回で攻略したいわけじゃ無いので、最初の数回は様子見になると思う。
やってきた洞窟は、とても寒い。
これまで≪氷魔法≫で作業をしてきたので耐えられるけど、気温は10℃前後じゃ無いかな。もっと厚着をしないと駄目かもしれない。
足場の悪さと寒さの相互関係で、戦闘中に転ぶという事があり得そうで怖い。
元々僕らは山歩きという事で肌面積の少ない格好をしているけど、動きやすさのために生地が頑丈だけど薄くて動きやすい物を選んでいる。
涼しい程度だった外では寒さ対策はあまり考えておらず、この洞窟の中を歩くには不向きかもしれない。
でも、日本はもうすぐ8月で、暖かい服とか出回っていない気がする。どうしようかな?
「長様。ここは専任の探索部隊を編成し、長様は報告を受け取るだけにしていただけないでしょうか?
私の勘ですが、この洞窟は危険です。長様が直接探索するのは避けるべきであると進言します」
洞窟に入って5分ほど、まだ100mぐらいしか中に入っていないところで、誾がいきなりそんな事を言い出した。
僕らは足を止めて、一度洞窟から出る事にする。
「誾。その勘って言うのは、今まで何か教えてくれた?」
「いいえ。今回が初めてです」
「ステージ2のボス戦でも?」
「あの時もです」
僕は誾の発言に首をひねる。
誾の勘という物にどれだけの信用を置くかという話なので、前例が無いので判断しづらい。
一瞬、寒かったからじゃないかと言いたくなったけど、さすがにそれは誾を馬鹿にしているような話なので言わないでおく。
勘という物がよく分からない時は、あとは言い出した本人への信頼度だけが判断材料になるので。
「しょうがないよね。じゃあ、探索はみんなに任せるよ」
「はい!」
誾を信用している僕は自分で洞窟を探検する事を諦める。
じゃあ洞窟を探検する事自体を諦めた方が良いんじゃないかという説もあるけど、洞窟の先に次のフロアがあるかもしれないし。洞窟探検を諦めるというのは論外である。
危険ではあるけど、蘇りも可能なみんなにそれを任せる。
僕は買った靴が無駄になってしまった事にもったいないと感じつつも、そのうち出番があるかもしれないと考えるのだった。
ゴブリンのみんなは体も足も小さいから靴のサイズが合わないんだよね。
オークのみんなは足の形状が違うからそもそも靴を履けないし、なぁ。




