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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
デストラクション
239/290

地獄の幕開け(上)

 吊り橋が完成した。

 自分でも使ってみたけど、かなり頑丈なものが出来た。

 ゴブリン達であれば10人乗っても大丈夫で壊れる気配が無い。さすがにモンスターが近くで暴れたり台風とか地震が来たら壊れると思うけど、『固定化』後なのでどうせリセットされる。リアルと違い、何も問題は無い。


 今後も似たような事はやるかもしれないし、ホームにも川があるんだ。あっちでも橋を作る事があるだろうから、いい経験になったと思う。



 橋が出来た事で、それを理由にみんなでお祝い。

 収入も回復しつつあるので、これで一安心という所。


 しかし問題は、リアルの方で起きていた。





「そういえば、中国が陸軍を動かしたみたいだねぇ。戦闘機が2度も落とされれば、しょうがないけど」


 僕は自宅でニュースサイトを見ていた。

 検索タグは「中国」「ゴブリン」である。


 こっち関係の情報は普段から集めるようにしていた。

 というのも、たまに、思い出したように有識者として呼ばれる事があるので、ちゃんと話題についていけるようにする為だ。



 中国の、対ゴブリン王国戦線は完全に手詰まりになっている。


 国内の問題の為、中国単独で解決するのは当然だ。他国の介入は論外である。

 ゴブリン王国内に外国人が多数紛れ込んでいるけど、そこは無視するようになっている。中国政府が「入るな」「行くな」といっている地域に勝手に入り込む不法侵入者の為、事の正当性は中国にあるのでそこは問題ない事になる。もちろん、騒ぐ人たちはいるけど。


 それで中国は2度にわたり戦闘機を送り込んだらしいけど、2度とも迎え撃たれ、撃墜されている。2度目は結構な数を送り込んだと聞いているけど。

 このあたりは「対魔法空中戦闘」など想定されていないのでしょうがない部分もある。未知の敵に既知の戦術が通用しない事はままあるものだ。中国軍が弱いというわけでは無く、どこにもノウハウが無いのが敗因だろう。

 このまま行くと、中国が対魔法戦闘の最先端技術を持つようになるわけだね。


 で、空軍を動かしてももう駄目で、被害がいたずらに大きくなるばかり。メンツの問題もあり、とうとう本格的に、主力である陸軍を動かす事にしたようだ。


 「先にミサイルでは?」と思わなくも無いけど、そこは中国軍にも何らかの思惑があるんだろうね。

 もしかすると、今のうちに対魔法戦闘の基礎技術を手に入れる為の作戦なのかもしれない。

 空軍2度の失敗により魔法戦闘の有用性が証明されてしまったから、諸外国がゴブリンを国民として受け入れ、魔法を活用し出すかもしれないし。



 ……自分で言ってみて、その可能性が非常に大きい事に気が付いた。

 「ゴブリナ」という、人間とさほど変わらない種族的な爆弾もある事だし、もしかすると、もしかするかもしれない。


 ゴブリナをサーヴァント化しているのが僕だけとは限らないし、すでにゴブリナが(・・・・・・・・)地球上に(・・・・)紛れ込んでいる(・・・・・・・)可能性(・・・)はゼロじゃ無い。

 紛れ込んでしまえば、見ただけではまず分からないよ。戸籍やDNA鑑定とかしないとバレないんじゃないか?



 さすがにそれは無いよね、と僕は怖い想像を頭から振り払った。

 ゴブリナと人間の混血がどうなるかは知らないけど、こっちで繁殖したゴブリンが魔法を使える事は確定しているわけだし。その影響がどうなるかなんて考えたくも無い。

 そして僕はそれを防げる立場にいないし、その力が無い。

 今度の会議で、いや、早めにメールでそのこと(ゴブリナのこと)を警告した方が良いか。後手に回ってるかもしれないけど。


 僕はメーラーを起動させ、有識者会議で知り合った人たちに将来的な危険性について送信した。

 これでどれだけの効果が見込めるかは知らないけど、やらないよりはマシだよね。


 ちなみに、これまでの動画にキズナ(ゴブリナ)の映像は出していない。

 ゴブリナ化して日が浅い事もあるけど、単純に、色々バタバタして動画の更新が滞っていたのだ。この件に関してはそれで助かった。

 下手に情報が出回った時の、周囲への影響がどんなものか分からないからなぁ。今はパニックになる事はないと思うけど、数年後に魔女狩りが始まるかもしれないよ。ネット上で下手な事は言えない。





 僕はゴブリナの件で意識がそちらに向かってしまった為に考える事を忘れていた。


 ゴブリンの王国が、これからどうなるかを。

 ほんの少数の空軍を撃退する事と、精強大軍と称される中国陸軍と敵対する事の差を。


 それは僕の知る現代までの戦争史の中でも類を見ない、凄惨で、醜悪な、赤き死に満ちた、地獄の幕開けだった。

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