橋③
問題が多い橋の建築だけど、全く作業が進んでいないわけでもない。
「じゃ、今回分の≪投擲≫、よろしく」
「ブモッ!」
ステージ3、橋の建築現場。
僕らはいつもの作業を始める。
僕が話をしているのは、オークの中でも特に≪投擲≫が得意な奴だ。
彼に銛の形をした槍っぽい物を投げてもらっている。もちろん銛にはロープが括ってある。
「ブモーーッ!!」
「ブヒー」じゃなくて「ブモー」なのが謎な彼は、この銛投げで40m近い記録を叩きだしている。ちなみに僕は27mが自己ベストで3位になる。
コントロールの方も申し分なく、魔法抜きなら村で1番の強者である。
そんな彼の投げた銛は対岸の地面、川岸から10m奥の地面に頭から突き刺さり、そこそこの強さで固定された。
軽くロープを引っ張っても銛が抜けないことを確認し、僕らはロープの端を近くの木に巻き付けた。
「じゃあ、『固定化』」
僕はEPを消費し、それを『固定化』する。
こうして銛とロープの固定化が終わると。
「引き抜けー!」
「「オォーー!!」」
別の連中がロープを引っ張り、力任せに引き抜く。木に巻いたロープをほどく。
みんなも慣れたもので、僕の固定化が終わるのに合わせて、銛とロープを回収する。
なにせ、回収するのは10本以上の銛とロープだ。手早くやらないと時間がかかる。
だけど何度もやったから、そこまで時間をかけずに済んでいるよ。毎回本数が増えるので、手間も増えているはずなんだけどね。
やっているのは、銛を使ったロープ渡し。
対岸にロープを渡して「道」を作る作業だ。EPによる固定化までが一連の流れなので、多少失敗しても問題ない。
一本のロープだと軽いゴブリンが体重をかけただけで落ちてしまうんだけど、たくさんロープがあればなんとかなるんじゃないかな、という期待を込めている。
このやり方の問題というか、楽をさせてくれない仕様が一つ。
「一度『固定化』した物は再度『固定化』できない」
それが出来れば、EPさえ足りるなら倍々ゲームができるから。それをさせない仕様なんだろうけど。
一度、銛をインゴットに変えてからもう一度作り直しても、ダメ。
持ち込めないわけじゃないけど、固定化はさせてくれない。混ざりものがあってもアウト。結構厳しいと思う。
食料品を増やせれば、畑とか必要なくなるからなぁ。今の仕様でもあんまり必要とは思えない部分があるし。
本来なら固定化そのものがあり得ない優遇だから、仕方がないとも言えるけどね。
そんな訳で、信綱や蔵人が用意した銛とロープ。
これが20本になったら誰かが向こう岸に渡って、本格的に橋の建築を始めるよ。
アタック110回目にはスタートできるね。




