表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーヴァーランダー  作者: 猫の人
初心者オーヴァーランダー
23/290

とある子供の初収入

 11回目のアタック。

 今回はゴブリンの集落を潰すだけ潰す事にして、細かい事はあんまり考えないことにしたよ。


 方法は簡単。各個撃破だ。

 ゴブリンが集落が出てきたところを追って殺す。


 方法としてはとっても単純だよね。



 ちなみに、山火事が起きなかった理由は「周囲が乾燥していなかった」かららしいよ。


 最低でも数日間の日照りなんかで乾燥していれば燃え広がるんだけど、特に水不足になっていない状態で火をつけても無駄だってね。

 どうしてもやりたいなら相応の火力がいるらしいんだけど、それって燃やす範囲に燃料をばらまく方法みたいでね、現実的じゃなかったよ。


 この『ゴブリンの森』ではできないけど、進んだ先では放火が必要になる事もあるらしいね。

 『死者の毒沼』『骨の森』っていうアンデッドフロアではよくある手法みたい。





 僕はスマホ片手に出て行くゴブリンを観察する。

 これまで使った事は無かったけど、アプリにSIMカードなしのスマホを使った監視システムを作れるのがあったからね。双眼鏡も用意したけど、メイン監視はスマホかな。


 欠点はバッテリー。

 足ふみ充電器やソーラーパネルとか、充電する方法が無いとすぐに使えなくなる。

 それでも1台で数時間は何とかなるから便利に使っているよ。


 あ。

 もう一つ問題があったね。

 スマホを持っていると、暇つぶしに使いたくなるんだよ。

 監視そっちのけで遊んでゴブリンを見逃したら馬鹿だからやらないけどね。我慢するのが大変。

 監視だけで何もしないって、かなり辛いよ。





 1日そうやってゴブリンの数を10ほど削って、ゴブリンの集落を観察し直してみると、ゴブリンの数は見える範囲には5~6匹。

 他はよく分からない。


 集落の規模とか考えるともう10匹以上いると思うから、これ以上は無理。

 オークションが気になるから今回は早々に撤退だね。

 ポイント少な目だけど、強敵ゴブリンもそれなりに殺したし? 30P以上は稼いでいるはずなので、僕は早々にクエストを終えることにした。



 帰ってすぐにスマホを確認。

 オークションの取引は無事に終了していた。


 結果、103万円。

 売値の平均が100万円前後って考えると、悪くない数字だと思う。

 回復薬は数が出回っているからね。大きく増える事も無いと思う。



 僕はネットで通帳の残高を確認してほっとする。

 僕の通帳に記載されている最後にあった収入は、保険金を含む家族の遺産だけなんだよね。



 両親と弟妹を殺したトラック運転手からの慰謝料は、当分入ってこない。

 こういった慰謝料や損害賠償金って、強制徴収が難しいらしいんだ。それでのらりくらりと誤魔化し続けて払わず済ませる犯罪者が多いって事らしい。和解なんかも済ませていないけど、ここに関わる弁護士は自分には関係ないという態度でしかなく、無能で役立たずだからそっちに期待するのは無理と、ネットでも評判だったよ。

 相手に取り立てる財産が無いと言われれば、実際に収入が無い相手とかだと、何にも出来ないんだって。

 家族4人が死んでいるので犯人の刑は懲役23年なら確実だろうって法律相談所の人は言うけど、慰謝料は半分どころか1割でも回収できれば御の字だって……。



 裁判で危険運転致死傷罪が確定しているはずなんだけど、犯人側がいろいろと言って裁判が長引いているし、慰謝料その他の支払いが決まってからもきっと犯人には収入が無いうえに、僕自身が就職できない環境だからね。そんな不安の中で得た今回の103万円には、103万円以上の価値が有るよ。

 だって、ものすごくほっとしたし。

 稼ぐ手段があるって事は、今後もやっていけるって事だし。

 その証明が形になるって、大事だと思う。





 初収入で、お寿司を食べる。

 美味しいよ。自分で稼いだお金で食べるお寿司は。


 お肉も好きだけど、お寿司だって僕は好きだ。

 マグロやなんかの赤身の魚もいいし、サラダ巻とか時代にあわせたお寿司も好きだ。

 ダンジョンにいたし、ずいぶん長い間食べてなかったから特に美味しく感じるよ。


 今日はお腹いっぱいになるまで、お寿司を食べるんだ。



 僕はお寿司を摘む手を止めると、コップに日本酒を注いだ。そのあと湯飲みに熱いお茶、コップにジュース2杯と続けて注ぐ。


 父さんは、日本酒があればそれでいいって、ビールとかは飲まない人だった。

 母さんは、アルコール全般が全然だめで、お寿司の時は熱いお茶が一番って。

 弟妹は、お寿司の時でもなんでも、コーラとかジュースばかり飲んでいた。お茶はあんまり好きじゃないって嫌がってたんだ。


 お祝い事にはお寿司って、誰かの誕生日とか、みんなで食べに行っていたんだよ。

 それを思い出すだけで泣けてくるほど、幸せだったんだ。

 失って、笑えていたことがどれほど大事かようやくわかった。



 ワサビは控えめにしたんだけどね。

 この日、僕は寝るまで泣いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ