≪神託≫(中編)
全力で叫ぶだけ叫んだ静御前は、すぐに意識を失った。
その後すぐに光の柱は消え去り、静御前は解放された。
正直、質量を持った光の壁とか、ファンタジーらしいと言えばいいのかSFだと言えばいいのか迷ってしまう。いや、どうでもいいんだけどね? 目の前の光景に理解が及ばないときって、現実逃避したくなるんだよ。
そんなありえないものが眼前から消えたので、解放された静御前を抱きかかえ、僕は何があったのかを考えるのだった。
静御前が目を覚ましたのは、その日の夕方だった。
彼女は昼すぎ頃にスキルを使ったので、5時間ぐらい寝ていた計算になる。
目を覚ましたばかりの静御前は、頭が働かないようなのでぼーっとしている。放っておくと、そのまま寝てしまうかもしれない。
「静、大丈夫?」
「……おさ、さま?」
静御前は僕の問いかけに反射的に返事をしたものの、意識が完全には戻っていない。
しょうがないのでもう一度寝るように指示を出し、頭を押して横にさせると、僕は翌日まで≪神託≫の結果を待つことにした。
「申し訳ありませんでした!!」
翌日。
静御前の所を訪ねると、顔を合わせるなり土下座された。
昨日のことを同室の誰かから聞いた様子である。
「いいよ、無理をさせたようだし。
それよりも、体調はもう大丈夫なのかな?」
「はい! 何も問題ありません!」
昨日の寝起き、その失態に恐縮する静御前を宥め、それよりもと、僕は本題を持ちかける。
「それで。≪神託≫は得られたのかな?」
「――はい。言葉にするのは難しいですが、確かな答えを得ました」
どうやら、問題は無さそうである。
朝ごはんのついでに話を聞くことにした。
まずはジャブという事で、静御前としばらく体調関連の話をしていたが、昨日のアレは情報過多による知恵熱のようなものと、得られた情報の中身による精神的な負荷が原因だった。
大量の情報を直接頭に詰め込まれたその方法だけど、それは運営側の種族では一般的な会話でしかなく、あちらも初めて≪神託≫が使われたことによりやり過ぎてしまったというのがその真相だ。
どうやら運営は人間とは完全に違う種族らしく、言語という不明瞭かつ不確かな意思疎通方法を使用しておらず、テレパシーなどによる認識に齟齬を発生させないコミュニケーションをしているようだ。だからどうしたという話だね。
あ、スキルなどの購入は、そういう意味では“彼らとの会話”による理解、そんな形で行われているようだけど、それもまたどうでもいい話だな。
そんな雑談を前置きに、静御前は重い口を開いた。
「運営の目的。オーヴァーランダーの存在意義ですが」
出来れば言いたくない。静御前はそんな雰囲気をにじませているからか、いちいちセリフが途中で止まる。
「開始から100年後、あと98年ほど先の未来に訪れる」
僕が知りたがっている情報だし、内容が内容だから。たとえ言いたくなくとも言わせるよ。視線の圧力を強める。
「地球人類絶滅の回避など、です」
おお、ありきたりな話が来たね。
ん? あれ?
「など」?




