攻略準備中
誾は全治1ヶ月という重症状態になった。
回復薬は一回の怪我に複数使っても効果が無いらしく、EPを無駄にするだけだった。
なので、しばらくの間、誾は村でお休みだ。
誾の替わりにゴブリナをパーティに加えたのだが、そこでひと悶着あった。
「名前! 名前が欲しいですのー!」
なんとなく、まだ名前を与えていなかったことで、ゴブリナが異議申し立てを行ったのだ。
ゴブリナっていうのは種族名なので、これまでは人間相手に『人間』や『ヒト』と名前を付けて呼ぶような状態だったわけだ。
名付けについては役職者クラスという制限を付けていたけど、ゴブリナもそろそろそういった特別扱いをできるメンバーと言えるだけの成長をしている。ステージ2のラスボス相手では、ちゃんと活躍出来ていたし。
じゃあ、という事で与えた名前は『キズナ』。
ゴブリナはその外見から人間とゴブリンの中間にいる種族っぽいし?
2種族の間にいるなら、それを繋ぐ者だろうという命名だ。普段と名付けの法則が違うけど、深い意味はない。
「長様、ありがとう! お礼は夜にでも――」
「寝言は寝てから言おうね?」
名前を与えたら調子に乗ったけど、ちょっとはしゃいだ程度なので見逃すことにした。
あと、当たり前だけど、キズナに手を出す予定は無い。
浮気は厳禁だよ。
そんなことでメンバーチェンジもあったけど、主力である僕らはステージ3を攻略中だ。
戦闘手順の組み立てや、採取物の探索など、やるべきことは多岐にわたる。今は他の連中も動員し、いくつかの仕事を止めてでもこちらに人を回している。
EPの方はゴブリンの森で稼ぐことはしっかりやっているので、900Pぐらいまでの減収に抑えている。
あと、橋の建設を開始すべく、ロープをはじめとしたいくつかの資材を生産中。
ロープを通して橋を作るか、川を渡れるだけの船を作るか。みんなで検討した結果、川の流れが全体的に急なので船は駄目だろうと諦めて、橋を採用したのだ。
今の僕らの技術なら、船よりも橋の方がまだ成功率が高そうなのだ。
これで流れが穏やかな川なら船を選んだんだけどね。急流下りの出来そうな川で船は無いだろうし、命綱とか何かあった時のフォローが出来そうなのも橋の方だった。
ただ、船の方は今後に出番があるかもしれないという事で、村にある海で運用すべく、開発をさせている。
丸太をくり抜くだけの丸太船、いくつかの木材を連結させる筏など、原始人レベルの船なら製作可能のはずだ。
あとは浮き輪などの作成もやらせている。もちろん、ビニールではなく木材で、だけど。
泳ぎの練習も並行してやらせているので、そろそろ≪水泳≫スキル持ちも出てくるだろう。
モンスターへの対応もそうだけど、水場への適応が進めば、僕らの選択肢はずっと広がる。
村の海や川でバタ足を練習するゴブリンたちを監督しながら、僕も高校時代からあまり泳がなくなったことを思い出し、自身も練習をした方が良いかなと考えていた。




