戦闘環境(霧狼)
この山脈で、敵の主力は大きい狼になる。
体高1mぐらいと、大型犬であるセントバーナードよりも大きい。頭から尾っぽまで、体長の方は4mかそこら。かなり大きい。
体毛は白く、霧の濃いところだと見失う事がある。たぶん、それ用のスキルかアビリティを持っているんだろうな。
そしてそこまで大きいというのに、なぜか木々の間をするすると動けるのがいやらしい。オーク達は動きにくく武器を振り回せないというのに、酷い差があるものだ。
あと、狼は群れで狩りをする生き物である。
よって出くわす時はだいたい6頭ぐらいで居るわけだ。
魔法抜きの戦力比で言えばゴブリン30人分でいるんだよ。泣くぞ、これ。
「信綱! 火力全開でいけ! 霧で延焼はしない! むしろやり過ぎるぐらいでちょうど良い!!」
「長様! 新手です!!」
「氷刃! 霧を消せるか!?」
「グギャ!!」
僕の居る主力パーティ。
魔法全開で戦えば、この霧狼――“きりおおかみ”や“むろう”では言い難かったので“ムロ”と呼ぶ事にした――は、なんとか勝てる。杖によるブースト補正があるからこその戦力的な均衡だ。魔法抜きなら絶対に勝てない。
現在のパーティメンバーは、僕、信綱、誾、蔵人、義輝、卜伝、そして『氷刃』の7人。
この氷刃というのは、出雲のメンバーの一人で、≪氷魔法≫の使い手のことだ。名無しでは面倒のほうが多いので、出雲のメンバーには『雷刃』『闘刃』『木刃』『百目』と名前を付けておいた。
この名付けに関しては少々もめたけど、やっぱり近しい連中なら名前は必要だよね。
で、今は霧狼と交戦してみたわけだけど。
参戦可能な仲間の数が多くても、敵との接触面積の問題で、あまり増やしても意味がない。基本的に6~8人パーティを基本にして動いている。
火力というか、≪火魔法≫担当の信綱が火炎放射の魔法を使って複数の敵をけん制しつつ霧を払い、視界を悪くする霧を氷刃の≪氷魔法≫で凍らせることにより取り払い、あとは視界がどうにかなったところでいつもの催涙弾で霧狼を行動不能にするという流れで戦っている。
戦った後は足場がドロドロになるため、移動するのが嫌になる。
戦って感じたことは、僕らには克服すべき問題が多いということ。
山脈というのは、当たり前だけど、傾斜があるということ。足場が斜めだといまひとつ踏ん張りがきかないから、振るう武器に体重が乗らない。攻撃が軽くなる。
薄くても霧があるところでは催涙弾の効果が薄くなるし、オオカミ特有の鼻の良さで大ダメージのはずが、催涙弾がそこまで強く効かないという謎の現象が起きている。さすがに霧が晴れたところで使えば効果絶大だけどさ。霧狼は地形ボーナス的な何かを受け取っているようだ。催涙弾に頼っていた部分があるので、これが上手く機能しないと結構厳しい。
足場の悪さが移動速度にも影響していて、相手が逃げに回ると取り逃がすことも多い。というか、逃げられたらほぼ追いつけないので、逃げられる前に決着をつける必要がある。
ゲーム的な考えだけど、これまで上手くいっていた分、レベル上げがおざなりになって、高レベル向けの狩場に来てしまった低レベルキャラのようだ。
蛇と共闘されることはあんまりないのでそこだけは助かっているけど、楽観視しすぎるのも良くないので、そこはあまり考えないことにしている。
とにかくだ。
まずは魔力の残量を気にしつつ、戦闘経験を積むしかないよ。




