ステージクリア祝い
海ができたという事で、一つやり忘れ。
「うーー、みーーーー!!!!」
大声を出す機会、最近は無かったからね。
たまにならおふざけもいいだろう。
……ゴブリンたちが真似しだしたのはお約束と思っておこう。
海ができたという事で、さっそく海産物をできるだけ回収して宴会の準備をする。
海産物、魚や海藻類があれば今後の生活に気合も入ると思うし。
やっぱり、自分が何をやっているのかも分からず仕事をするより、何をしているのか理解し、実感してくれた方が気分的に良いよね。
宴会のお題・名目はステージ2のクリアと、『海』設置の記念。
こっちに来てからすぐに宴会をしなかったことに疑問を持たれたけど、祝い事を二回やる余裕は無いので、こんな流れになったんだ。
その分は派手にやるから勘弁してほしい。
今回も、お酒を用意した。
ドローンの持ち込みをせずに、その分で空いた余力を全部お酒にしてみた。
とは言っても精々20リットルしか持ち込んでいないので、1匹当たりの酒量は100ミリリットルも無い。
ちょっとした景気付けとも言えない量だけど、やっぱり祝い事にはお酒だと思うので、ちゃんと飲んでほしい。
こっちでお酒を造れるようになればいいんだけどね。
口かみ酒なら技術も手間も時間も要らないから、すぐにできるし。本格的な、日本酒みたいなのを造ろうと思えばシャレにならないトライ&エラーの連続だろうけどさ。
試すとしても、その前に米や小麦を収穫できるようにならないとね。
米は無理かな?
他の持ち込みは、やっぱりカレー粉。業務用の大きな缶をいくつも持ってきた。
カレーは人気なんだよね。スパイス類は全然栽培していないけど。
こっちで作ろうと思うと気温など環境がネックで、全部のスパイスハーブがまともに育つとは思えない。日本の栽培農家の写真があったけど、あれは温室で環境を整えていたからね。さすがに温室は設置できないから無理だよ。
カレーは僕の持ち込み以外では食べれないと、そう考えてもらうしかない。
誾と静がカレールーを手になにか相談していたけど、何を考えているんだろうね。
諦めきれないのかな?
なお、カレーはあっても(僕以外は)ご飯無し。
カレーはジャガイモベースのパスタモドキや肉に付けて食べているよ。
準備が終わり、夜になった。
多くの食料を準備し、僕は総勢200を超えるサーヴァントたちの前に立つ。みんなの視線が集まった。
僕を含む全員の手には木でできたコップが握られており、わずかばかりの酒が入っている。
みんなは何も言わずに僕の声を待っている。
僕はコップを天に突き出すと、難しい挨拶など抜きにして、一言だけ。
「乾杯!!」
僕の言葉は、サーヴァントそれぞれの思い思いの言葉で返えされる。
その中には日本語で「乾杯」と返すものも多くあった。
普通に乾杯と言い返せるゴブリンは、≪日本語≫スキル持ちは、実は結構増えている。
若い世代が特に多く、親の世代から日本語を聞く機会が増えたのが影響しているのだろう。スキル無しで日本語を喋りだし始めたのだ。逆に≪新田ゴブリン語≫という、僕の所にいるゴブリンの言葉をスキルで理解するゴブリンまで出てくる始末だ。
よくよく考えれば僕も≪日本語≫スキルを持っていないし、スキルの獲得っていうのは、何かしらの超常が働いていない場合は適用されないのかもね。
そのあたりは要検証、という事で。
誾が僕のコップに、こちらで用意したリンゴの搾り汁を注ぐ。
甲斐甲斐しく僕のそばに控える誾の頭をなでて、彼女をねぎらう。
今は難しい事を考えるより、みんなで楽しむ方が優先だよね。




