ステージ3
そういえば、小阪さんと付き合いだした事を言ってなかったなぁ。
僕は崩れ落ちたゴブリナを見てそんな事を考えた。
日本での僕の話は、ときどきサーヴァントのみんなにも話している。
別に隠しておきたい事でも無いし、互いの話をする事が無駄だとは思わない。僕という人間、その背景を理解する手助けになるだろうし。
話さなくても分かる、そんなのは妄想の類いだ。
人もゴブリンもオークも、みんな。言葉を交わしてもわかり合えない事は多い。
だからこそ、少しでも語り合ってわかり合おうとしなきゃ駄目なんだ。
ただ、この件は、まだ言ってなかったよ。
言い難いと言うほどの事でもなかったんだけどなぁ。
誾に連行されたゴブリナは、次回にでも新しい名前を与えるとして。
それよりも今は優先すべき事がある。
それはステージ3の確認。
クリアボーナスで『海』の購入に必要なEPは貯まったけど、その前に新しいステージを確認しておきたい。
『海』は2万Pと高額なのだし、僕のEPはたとえ1Pでも無駄にできるEPじゃ無いんだから、これは必須だ。
そんなわけで、僕は信綱らゴブリンオンリーのメンバーを引き連れて、ステージ3へと向かった。
ステージ3は、一言で言い表すなら『山脈』だった。
最初、僕らは真っ暗な洞窟に出た。
また『迷宮』かと暗澹たる気持ちになったけど、一方通行だったので行ける方にしばらく進むと、山の斜面に出た。
木々がそこそこに生え、緑に覆われた山々。木々は間伐されたような密度で生えているので、視界はあまり暗くない。ただ、天気があまり良くないので明るくも無いけど。
今は夏なのに霧が立ち上り、少し肌寒い空気。空は分厚い雲に覆われている。雨が降ってきそうな灰色の雲では無く、日光を少し遮るだけの白く薄い雲だ。
下の方を見れば川が流れていて、視界のほとんどを埋める山の面積よりはずいぶん狭いけど、平野があり。
空には大きな鳥が飛んでいる。多分も何も、アレはモンスターだろう。遠くからなのではっきり断言できないけど、羽毛に覆われているので恐竜タイプではないと思う。
このステージ、どう見ても海は関係なさそうだ。塩は期待できない。
残念無念。これは詰んだ。
ちゃんと探せば岩塩の鉱脈があるかもしれないけど、それを探すスキルが僕らには無い。
これはもう、諦めるしか無いね。
僕らは1時間ほど周辺を歩き回り、出てきたモンスターを倒すと、この日の探索を切り上げてホームに帰った。




