ステージ2 攻略戦⑤
「――と、いう訳で。僕らは安全を優先して、みんなで帰ったんだ。
みんな、僕の「安全は常識」をしっかり理解しているからね。そこは意識が統一されているという訳さ」
僕は小阪さんと一緒にファミレスでご飯を食べつつ、互いの近況について話をしていた。
小阪さんは僕のオーヴァーランダーでのアタック状況について興味を持っていたので、多少のサーヴァント自慢を交えつつ、軽めに聞こえるようにその話をしてみた。
みんな、僕の考え方ややり方をちゃんと理解しているからね。意識が統一され乱れの少ない、頼りになる仲間たちだよ。
余談ではあるが、「安全は常識」は海外でよく聞く言葉だ。英語圏、アメリカで「セーフティ イズ バリュー」と書いてある。
「安全とは第一などと言われるものではなく常識なので、一番に掲げるのではなく、それ以前の話として守るべきものだ。いくら寝坊した人間であっても、慌てていようが、パジャマのままで出勤はしないだろう?」と説明された。
小阪さんは僕の話に対し、感心したように相づちを打ったり質問をしつつ、話が進む、上手な聞き手をしていた。
こちらに感心したふうに見えるので自尊心をくすぐられいい気分になるし、ときどき質問を挟み「それで、どうなりましたか?」と続きを促すように聞いてきたりするので話題が途切れにくい。
僕はそういうのがあまり得意ではないので、上手く場をコントロールしているなー、と感心させられる。
逆に僕が小阪さんの話を聞くと、主にバイト先で上司への愚痴や仕事への不満などを漏らされ、どちらかというと仕事そのものよりも人間関係の問題でストレスがたまると打ち明けられたりした。
この問題に解決方法はなく、「ただこうやって話を聞いてもらえるだけで嬉しい」と言われたけど、そういうものなのかと、僕は少し不安になったりする。
正直、人間力というか対人スキルでは小阪さんの方が上という気がしたので、ちょっと苦手意識や劣等感を感じてしまった。
アタック99回目。
大台の、100回目が見えてきた。
ここでクリアしても、次でクリアしても良い区切りになるよ。
細かいところは前回の繰り返し。
1日でフロア3を攻略し、翌日にボスへと挑んだ。
ただ、今回は藤孝や出雲のゴブリンが少し無理をして、“前線”となる壁を部屋の中に作るところから戦闘を始めた。
「さすがに270°に敵がいると、圧迫感があるね!」
敵の行動パターンを確認するために、僕らは踏み込む覚悟を見せる事にした。
髑髏の魔術師は動かずに固定砲台となるのか?
その魔法の射程はどれぐらいなのか?
魔法を使うとき、攻撃の間隔はどれぐらいか?
それを知っていると知らないとでは作戦の難易度が大きく違う。
前回と同じようにやればいいという気もしたけど、その後を考えると、少しでも部屋に入っておきたかった。
ほんの数秒が明暗を分ける事もある。
出来る事は、ちゃんと試したかった。
ありがたい事に、5mぐらい中に入っても魔術師は何もしなかった。
前回と同じように骨兵士を作ると、その場で待機。攻撃は骨兵士にお任せである。
骨兵士は生きている者に反応するのか、入り口付近と5m進んだ先に分散してくれたので、もしも魔術師を倒した後、一気に駆け抜ければ無視していくことも可能だと思う。
10mほど進むと、魔術師が反応した。
漢探知をした卜伝に、よく分からない黒い霧のようなものを生み出して攻撃してきた。卜伝はとっさに後ろに下がって霧を回避。2mほど後ろに下がると、魔術師は何もしなくなった。
僕らの魔法では、一番遠くまで届くものでも30mぐらいが限界だ。あと40mの地点で攻撃されるのであれば、また白ゴブ姫に頑張ってもらうしかない。
少し下がったところから、白ゴブ姫と鞍馬が協力して髑髏の魔術師を撃破。≪神聖魔法≫は本当に、こういった時に強い。
気になったのは、魔術師が動くことなく倒せたこと。命の危険があるのにその場から動けないとか、この魔術師とかはどんな存在なんだろうね? 骨兵士もそうだけど、こいつらってゴブリンとかと比べると人形っぽい。
僕らは髑髏の魔術師を倒すと、入り口付近に戻って骨兵士を魔法陣から引き離すよう、集める事にした。




