ステージ2 攻略戦③
青白い炎による攻撃。
それは魔法によるものであり、物理現象でもある。
どこぞのゲームのように、『魔法攻撃力』『魔法防御力』といったパラメータが存在するオーヴァーランダーであるが、それはこういった場面に適用されない。
あくまでそれらは「魔法の効果の強さ」と「魔法に対する抵抗力の強さ」を表現しているのであって、「魔法によって発生した物理現象」への抵抗力が高い事を示しているわけではない。
つまりだ。
髑髏の魔術師を焼くのは物理的な攻撃手段であり、魔法的な攻撃に対する防御力とは関係なかったりする。
魔術師っぽいから魔法には強そうだけど、魔術師なんだから物理に弱いっていうのはお約束だよね。
髑髏の魔術師は僕らには理解できない叫び声をあげた。
それは「あ」とも「お」とも取れる濁った声であり、魔法を使うための叫びだったのかもしれない。
炎の中で、魔術師の叫びに応えて骨の兵士が立ち上がる。
その数、おおよそ50。
まさに軍勢とでも言うべき規模だった。
ただ、残念ながら僕らは壁を作り、その上から攻撃している。
高さ2mの差は大きく、近寄ってくる骨兵士は僕らに対し有効な攻撃手段を持っていなかった。
元がゴブリンの骨兵士は小柄で、手を伸ばし剣や槍を振り上げようと、僕らにそれを届かせることができない。付け加えると、武器などを投げる、壁をよじ登るといった知性が無いため、壁の近くでたむろするだけだ。
まぁ、簡単なものではあるが防衛陣地を作られることを想定していなかったのだろう。
逆に、こちらに地味だが着実にダメージを与えているのが『白ゴブ姫の作った魔法の杖』へと攻撃している連中だ。
白ゴブ姫が追加で魔法を重ね掛けし、太さを維持しているから何とかなっているが、それが無ければ延ばした先を切り落とされて終わっていただろう。
その為、白ゴブ姫の魔力は10分も維持できれば良い方だ。
なお、先端部分に攻撃してきそうな奴は鞍馬が≪神聖魔法≫で対処している。近場にいるのは僕の担当かな。
骨兵士の数を削って、少しでも白ゴブ姫への負担を減らしたい。
髑髏の魔術師の方に、動きが無い。
炎に焼かれるままであり、着ていたローブが完全に灰になっている。持っていたはずの杖も焼け落ち、見た目だけで言えばただのスケルトンになってしまっていた。
人間の骨とゴブリンの骨は基本的に同じようなものだと思う。
そうだから、青白い炎、酸素を十分に供給された高温の炎に曝されればどんどんダメージを受けているはずだ。
「藤孝、交替!」
「ギュ!!」
それでも、炎だけで骨を焼き切るというのは難しい。
止めを急ぐのであれば、別の魔法を使うべきだろう。
僕はボーラを用意し、藤孝は別の魔法の準備をする。
僕はボーラの重り部分を振り回して遠心力を乗せ、髑髏の魔術師の頭よりやや上を狙って攻撃をした。
残念ながら、ボーラは50m以上離れているであろう髑髏の魔術師まで届くことは無い。
付け加えるなら、相手にも余裕で躱すだけの時間がある。
だから藤孝が魔法で後押しをする。
『水晶の杖』を使った≪火魔法≫・≪風魔法≫の爆発でボーラを加速させ、髑髏の魔術師が回避できない勢いを作る。
ボーラは普通に投げたときの倍近い速度で飛んでいき、髑髏の魔術師の頭と胸のあたりを強く打ち付け、その骨を砕いた。
「よっし!!」
僕は思わずガッツポーズをして、楽に終わったボス戦を喜ぶ。
前回の、ステージ1の時の様に、味方に被害が出ていない。無傷の完勝に笑みを浮かべた。
だが。
「あ、れ? 雑魚も殲滅しないとダメなのか?」
ボス戦は終わらない。
骨兵士はまだ健在であり、その数を減らしてはいるものの動きを止める事が無い。
僕は気持ちを切り替える。
残った雑魚を殲滅すべく、魔力の消耗を抑えるために、バールのようなものを使い物理で骨兵士の相手をするのだった。




