≪神聖魔法≫
僕らは互いのスキルを教え合ったりすることがある。
主に魔法関係だけど、「こんなスキルがある」「こんな事ができる」といった情報を伝え合う事でスキルの獲得を早めようとするのだ。
教え合うのが主に魔法なのは、魔法が一番手軽で実用性のあるスキルだからだ。
特に需要が供給を大幅に上回る魔法の場合、練習する奴はたくさん出てくる。
「あ、できた」
僕もいくつか魔法を練習していた。
すでに覚えている≪火魔法≫の練習は欠かさないのはもちろんだけど、新しい魔法の習得にも余念がない。
≪風魔法≫と≪土魔法≫はすでに習得済みで、今は≪氷魔法≫の習得を目指して練習していた。
で、今さっき、≪氷魔法≫を使えるようになったのだ。
ゲーム的な話をするなら、スキルと言うのは覚えれば覚えるほど新しいスキルを覚え難くなっていく。
が、このオーヴァーランダーは別の考え方をしていて、関連する、似たようなスキルを持っていればいるほど次のスキルを覚えやすくなる。
実際に≪風魔法≫よりも≪土魔法≫、≪土魔法≫より≪氷魔法≫の方が早く覚えられた。
次の≪雷魔法≫も覚えるのは簡単だろう。
ただし関連スキルが不明な≪闘気≫などは、どうやって練習すればいいのかわからないので、事実上の棚上げ状態だったりする。
このスキル、有用そうである事は分かったんだけどなぁ。先生役が欲しくてEPを使って覚えさせたんだけどなぁ。
もったないね。
≪闘気≫スキルは横に置き、≪氷魔法≫スキルはゴブリンやオークたちが必死になって練習するようになっていた。
と言うのも、夏は暑く、暑さを凌ぐ≪氷魔法≫の需要が非常に大きいからだ。
やっぱり目標がしっかりとしている方が覚えが良いらしく、新規で覚えたのは僕で5人目。専門家の藤孝や、意外と魔法に適性のある信綱などが使えるようになっていたりする。
覚えたてという事で、練習がてら氷を誰かの部屋に置くといった事をしている。そしてそこで涼を取るゴブリン。
あんまりやり過ぎると練習に身が入らなくなる気もするけどね。でも、みんながみんな≪氷魔法≫を練習しているわけじゃないから。邪魔をしているという事は無いと思う。
そうやって夏の需要に応えるべく、供給源になろうとしている奴が多い魔法はいいけど。
需要があっても練習する奴がいない、少ない、結果が出てくれない魔法も存在する。
その代表格が≪神聖魔法≫。
鞍馬の得意とする、対アンデッド用の攻撃魔法であった。




