≪闘気≫スキル
生活のランクは、一度上がったそれを落とすのが難しい。
いい生活に慣れると、ランクダウンに耐えられないっていう、よく聞く話だ。
ただ、どうしてもランクダウンせざるを得ないと、その不満のぶつけ先が必要になる。
今回は、あの悪ガキどもがその対象だ。
僕に文句を言えそうな奴は今のところ居ないからね。
よくよく考えてみると、あの悪ガキ一同を糞尿処理班に組み込んでしまう罰ゲームもアリなんじゃないかな。
生活態度の悪い奴、仕事に不真面目な奴。
そんな連中なら多少扱いを悪くしてもいいだろう。
「それは既に実行済みです、長様」
それを誾に提案してみたら、もうすでに対応済みと。
「ああなりたくない」という立場を作るのが、社会を作るうえで何かと有効なのは、歴史が証明している。
そういえば、誾には歴史とかを教科書一通り分だけさらっと勉強させていたか。
インドのカースト制度をはじめ、身分制度の導入は必然だったねぇ。日本だって表立った法律には何も書かれなくても、暗黙の了解による身分制度は確実に存在するから。
ちなみに奴隷制度は必要ない。
奴隷と言う立場を作らなくても、最初から扱いがそれに準じているからね。
職業選択やら移住やら恋愛やら。そもそも、そんなものはこのホームに無いんだよ。
生産関連は順調ではないけど確実に前に進んでいるからいいとして。
身分制度も特に問題なし。
問題があるというか上手くいっていないのは、スキル関連。
うちの『出雲』が停滞気味なんだよ。
今は7月、暑くなってきたので≪氷魔法≫が活躍しているとか。
≪雷魔法≫はバッテリー問題を解決しつつあるとか。
≪樹木魔法≫が畑の役に立っているとか。
≪診断≫は迷宮から人が帰ってくると出番ですよ、とか。
ここまではいいんだ。
でも、≪闘気≫スキルは、今のところ日の目を見ていなかったりする。
スキルの説明が特にないので、≪闘気≫スキルはどう使えば分からないというのがまず一つ。
漫画知識で言えば、全身に膜が張られて防御力が向上したり、身体機能が向上したりするスキルだと思っていた。
あとは『〇めはめ波』が撃てるようになるかも、と。
こうやって言わなきゃいけないという事は、そうではなかったという事。
僕の予想はことごとく外れていたんだ。
スキルを覚えた本人は、闘気を体に満たすことはできるけど、それがどういう効果を持っているか分からないと言っている。
今度はこのスキルを使い物になるように考えていきたいんだけど。
けどなぁ。
闘気の使い方なんて、文字通り戦闘用だろうし。
どうやって、なんて言うまでもなく、迷宮あたりで戦わせるのが一番いいに決まっている。
そこで僕は、≪闘気≫を覚えたゴブリンをちらりを見る。
今は長さ2mの竹槍を持ち、突きの練習をしている。もちろん≪闘気≫は使用中だ。
だというのに、他のゴブリンと何も変わらないようにしか見えない。突きの速度、威力、ともに「普通」だ。
本当に、何の意味があるんだろう?
僕は≪闘気≫スキルの効果がまるで予測できず、頭を悩ませるのだった。




