バランス
「ギュオォォッ!!」
迷宮から出てホームに戻ると、蔵人が頭を抱えて何か叫んでいた。
蔵人は頭を抱えたまま地面へダイブ。そしてゴロゴロと床の上を転げまわっている。
最初に蔵人が経っていた所、床を見れば一枚のタオル。そして編みかけの何かと編み棒、毛糸。
ああ、タオルを作ろうとしてまた失敗したんだねぇ。
あれ、面倒くさいからなぁ……。
割とどうでもいい話。
布関係は初期から綿花を栽培しているし、そこから糸を紡ぐ道具も作っている。
ただ、最近は強盗行為と言うかね、ゴブリンの集落から略奪した服が大量にあるので、重要度は下がっていたりする。
ぶっちゃけ、作るより奪った方が早いです。
座布団や羽毛布団などを作るのにも使うし、体を拭くのにも有効だから、素材として見ればいくらあってもいいんだけどね。
それに布は耐久消耗品だし。ボロくなったら火種にすればいいわけだよ。
略奪品は荒いけど、基本となる布であれば特に不満も無く使えるわけだ。
ただ、奪った品だけでは満足できないのも、また事実なんだ。
織り方の細かさによる手触りなどで劣るのはもちろん、接触冷感とか素材の面でも日本の百均にすら大きく劣る。
でも、何も日本の品質に追いつけなくともいい。
目の前にあるものから学び、少しでも先に進めれば。
そんなわけで、今はトルコのボディタオルというのをゴブリンの中でも器用な連中が作ろうとしているわけだ。
なんか星形か雪マークみたいなのを組み合わせて織るやり方なんだけどね。これなら手作業でもタオルが織れるというので挑戦させている。
ただし、難しい。
普通の編み方よりも手間がかかる。
そしてミスをすると、タイミングにもよるけど大きく後退するので、途中で失敗した蔵人が発狂しているという。
そんな暴れる蔵人の元へ、猪を仕留めてきた義姫ら狩人御一行がやってきた。
で、蔵人を蹴ると、蔵人は正気に戻って作業を再開し始めた。
義姫らは「食料調達とは本来は難しい事である」という食育のために狩りを学ばせている。
以前、料理に悪戯をする馬鹿が出た。
そんな馬鹿が二度と出ないよう、食料は本来貴重であることを分からせるためにも、飽食とならないように人口増加に対応する「猪の固定化」を今回はやっていない。
たくさんあるから大切であることが分からない。
ある程度制限し、やや足りないぐらいを目安に供給量を絞っている。
狩りを行う、畑仕事を頑張るなどして食料を確保しないと、飢え死にはしないけど空腹を抱えながら生きるようになってしまうのだ。
だから今は昔と比べると食材を大切にするし、「もったいない」の精神も芽生え始めている。色々と、頑張る。
やっぱり過保護は良くないんだよ。
何と言うか、かじ取り、バランス調整は難しいね。
際限なく与える事だって不可能ではないけど、やりすぎると「心が腐る」し。
もっとも、それが上手くできる人間なら、僕は今頃政治家の卵にでもなっているだろうけど。
そうじゃないなら、そういう事なんだろうね。




