「次」の話
結婚とか、正直、あんまり自分がするイメージが無いんだよね。
昔は、恋人がいた頃は「ああ、この人と結婚するんだろうな」って思った事もあったけど。独り身になったら、途端にイメージできなくなった。
で、今は恋人を作りたいって考えも無い。
オーヴァーランダーのプレイヤーとして生きていく事にやりがいを感じるし、そこで紡いだ新しい縁、ゴブリン――だけじゃ無かった、今はサーヴァントのみんなっていう新しい家族達との関係に満足しているので寂しさが無い。
つまり、僕は現状に満足しているんだろうね。
……満足しちゃっているのは、狭い目でしか世界を見ていないから。
本当はもっと危機感を覚えていないと駄目なんだけど、どうにも、僕は「10年後の自分」から目を逸らしているようだった。
アタック91回目。
ゴブリンの国とか将来とか難しい話は横に置いて。
それよりも、と、僕はホームの現状に目をやる。
今後の方針として、川を増築する事も最初は考えたけど、それよりも塩の供給を安定させたいので、しばらくは土地を増やしつつ『海』を購入する為に貯金をする事にした。
『海』のお値段は『川』の5000Pを超える、2万P。土地と水場40個で合計1万6000P、海にするのに4000Pも必要になる。かなり泣きたい数字だった。
我慢の日々は、途中の日本円追加を含め、あと16日となる。
ただ、実はこれでもお安くなっていた。
『川』がある場合は、川に連結させるように海を設定するなら、2000Pほど安くなる。
もちろん情報規制されている内容なので、ネットでもどこでも流れていない情報だ。
たぶんだけど、「配置の組み合わせ」で設置費用が変動するシステムなんだと思う。
川から海に水が流れる、その関係が影響しているんだろうね。
これで山とか森を設置する時に、また何かあると嬉しいんだけど、何がどう関係しているのかはっきり分からないのでなんとも言えない。
ちなみに、『山』の設置費用は土地込みで1万5000P。
もしも『山』設置後に岩塩が採掘できる『塩鉱』とか出てきたら泣く自信があるね!
あと。これが肝心な話なんだけど。
そろそろステージ2をクリアしようと思うんだ。
と言うのも、僕らの魔法戦力が大幅に向上したのがその理由だ。
これまでステージ2のアンデッドモンスターに有効な魔法というのは鞍馬の≪神聖魔法≫だけだった。
他の魔法は効果が薄い上に、魔法を使うのに必要な詠唱時間というか準備時間が長すぎて、魔法使いは固定砲台のような役割しかできなかった。
威力と危険性を天秤にかけ考慮すると、鞍馬以外を魔法使いとして使うのが危険なだけと、僕は考えていた。
しかし、魔法の杖で威力が向上したことで固定砲台の魔法使いにも価値が出てくる。
これなら実戦投入しても良いと思えるほどに。
今のところ、魔法使いにする候補は藤孝がトップで信綱がその次となる。他にも数名いるが、この2匹が僕らの中ではトップクラスになる。
あ。もちろん鞍馬は殿堂入りクラスだけどね。回復役の誾も別枠ですよ。
魔法使いの実績として、宝箱回収部隊には杖を渡し、骨巨人の討伐をやらせている。
ネトオクで購入した長さ50cmのクリスタルロッドにより鞍馬の攻撃力が大幅に向上したので、試しにやらせてみたのだ。
結果の方は上々。危なげなく勝てるようになったと聞いている。
そのおかげでEP収入が一回1200Pで安定した。
マップ作りのために次のフロアも散歩しているみたいだよ。フロア4のボス情報を聞く限り、次のフロアでステージクリアになるんじゃないかな。
ボス戦は厳しい戦いになりそうだけど、勝利への道筋はしっかり見えている。
いつものように、安全に完全に勝ってみせよう。




