魔法と杖と宝石と
まず、最初にいつも使っている魔法を試してみる。
「『灯火』」
火を付けるための簡単な≪火魔法≫、『灯火』の魔法。
まずは何も無しで火を出してみる。
この魔法は指先に火を灯すのだが、指先は熱くならない。
これはファンタジー仕様というわけでは無く、僕の努力の結果だ。最初は指先を火傷してしまったが、練習して熱が僕の指に影響を及ぼさない様に調整したのだ。
イメージとしては、熱の伝播の方向性を制御する断熱フィールドを指と火の間に作っている。
言葉にすると凄い事の様に見えるけど、実際は出している火と同じ大きさ、点レベルの断熱効果で十分だから割と簡単だったりする。
当たり前だが、火の上の方は普通に熱いので、顔を近づけると髪が焦げたり失明したりする。
次に、魔法の杖を持った状態で≪灯火≫を使ってみる。
火は指先から出してみるが……。
「効果は無さそう、かな?」
結果は、変化無し。
右手に杖を持って左手の指先から火を出すとき、杖の支援は全く無い。
気を取り直し、今度は杖の先から火を出す様にイメージをする。
杖を天に掲げる様に持ち、魔法を使う。
「『灯火』……キャンセル!!」
効果は、絶大。
普通に『灯火』を使ったはずが、かなり大きな火が出ていた。明らかに効果があると分かる。思わず魔法をキャンセルしてしまった。
「危なかった、って、ええぇ!?」
そして持っていた杖の先端を見て、僕は驚きの声を上げる。
杖の先端にくっつけておいたルビー。それが無くなっていた。それも跡形も無く。
「可能性としては、消耗品として扱われた? 使い減りしない装備品じゃなくて」
ゲームで言えば、ほとんどの杖は装備品である。装備しているキャラクターの魔法攻撃力などに補正を与え続ける、耐久消耗品だ。
しかし今回はくっつけた宝石が無くなっている。杖は耐久消耗品扱いだったが、消費されたルビーだけが消耗品のブーストアイテムになったという事だろうか?
僕は宝石の無くなった杖を再び掲げ、『灯火』を使う。
すると、普通に使うよりは少し大きい火が出て杖そのものにもそこそこ効果があると判断できた。
杖を使うという方向性は間違っていないらしい。
「そうなると、問題は宝石か」
あんまり高くない、一個数千円で2000円以上5000円未満のものがほとんどの宝石達。
これが、消耗品とはいえ魔法の超強化アイテムとして使えるなら。これはものすごく効率のいい話じゃないだろうか。
EP1000で100万円ぐらい。
これで仮に300個の宝石が買えるとすると、一個あたり33Pぐらいという計算が成り立つ。切り札的な使い方ができるとすると、安い買い物だと言える。普段使いはさすがにもったいないかもしれないけど、そこまで惜しむレベルとも言えない。
大規模な土木工事とか、何らかの理由で大きく魔法を使いたい場面なら使ってもいいかな。
あと、気にする事と言えば宝石の種類と属性の関係かな。
ゲーム的な考え方では、赤い宝石であるルビーは火属性と相性がいいってイメージがあるし。これで他の宝石を使ったら効果が変わるのかな?
厳密に、ある程度の科学知識を交えて考えると、青系や白系の宝石の方が火力が上がりそうな気もするんだけどね。炎の色的に。
そこは試してから考えればいいよね。




