魔法の検証 魔法の杖
「あれ? 僕は一体何を……」
ふと気が付くと、日本の自室に戻っていた。
慌ててスマホを確認するけど、オーヴァーランダーのアプリは消えていない。無事にクエストをこなして戻ってきたようだ。覚えていないけど。
クエスト失敗は即アプリ削除の再登録不可だからね。記憶が定かでないうちに戻ってきたとなると、そりゃあ心配の一つもするさ。
何があったのかは覚えていないけど、今の僕が何をしなくちゃいけないかはちゃんと覚えている。
いつも通りに、物資の補充をすることだ。
買い物をしながらも、どうすればもっと上手く魔法を扱えるか考えてみた。
パット思いつくのは呪文詠唱などのイメージ補助だけど、某ドラまた魔法少女が主人公のラノベではカオス・ワードという魔法専門言語があった。剣と魔法のTRPGだと古代魔法語とか勉強しなくちゃいけないという話もあった。
つまり、日本語で普通に呪文を唱えても意味が無い?
そこからふと思い出したけど、焼き鳥屋で注文できそうなタイトルの漫画の魔法では、魔法の行使に『発動体』という物が必要だったはず。
それは杖だったり、指輪だったり。よくあるRPGでも杖を装備すると魔法攻撃力が上がるし、それと似たような物だと思う。
つまり、魔法の補助が可能な杖を装備すれば、攻撃魔法も使えるようになる?
可能性の一つとして、試してみるのもアリじゃないかな。
そんな訳でやってきました、密林さんのパワーストーン販売ページ。
あんまり質の良くない、カットされていないような宝石を買いに、通販サイトを覘いています。
僕が考えた魔法の杖のイメージだけど、樹齢数百年の古木から作った杖の本体に、パワーストーン、要するに宝石を取り付けたものがふさわしいと思う。
ただ、古木の枝で作った杖なんて、日本では早々お目にかかるものじゃない。金銭の問題じゃないんだ、そこはもう諦めるしかない。
だけど、宝石なら普通に買える。それこそ今覘いているサイトであれば数千円でそれなりのサイズの石を買えるんだ。即日引き渡しの天然石ですら1万円を超えるものの方が少ないっていうのもどうかと思うけど、安い分には都合がいいよね? 上手くいく確証も無いし。
僕は適当に、誕生石のページからルビー、アメジスト、トルマリン、ターコイズ、エメラルド、ムーンストーンを買ってみる。
6個買ったわけだけど、送料込みでも3万円しない。
転売とかできる訳じゃないし、そんな事をするわけでもないけど、この宝石は失敗したらただのゴミだろうねぇ。
アタック83回目。
いつものように、いつものメンバーで狩りに行こうと思ったけど、今回は直属部隊と一緒に狩りに行くことにした。
経験値稼ぎは戦闘が効率良いからね。魔法の腕を伸ばすのにも、きっと効果があるだろう。
僕の出雲は、比較的若いメンバーが多い。
戦闘経験も少ないわけだけど、それでもルーチン化された狩りは問題を起こさない。
当たり前のことを、当たり前にする。それだけで敵を殲滅できる。
問題はその当たり前を実行できるかどうかなんだけどね。
新兵は精神的な圧力から上官の命令を無視して攻撃を開始してしまうとか、ネットの噂話ではよく聞くし。実際、命の危険がある状態っていうのは慣れないときついよね。
ま、僕の所のゴブリンはそんなことしないけどね!
いつものお勤めが終わると、今度は自作の『魔法の杖』の試運転だ。
杖の本体はやっぱり木製が基本だと思ったので、そこそこ太い樹の枝を使って作った。ちゃんとニスも塗ったよ。
あとは先端部分に宝石をはめ込む穴をあけ、接着剤で宝石を固定。
安っぽいけど、今はこれが精一杯。
さて。
上手くいくかな?




