ゴブリンの集落巡り①
地図の件。
僕が関係していると考えたのは、地球に持込まれたゴブリンだ。
確証はないけど、あのゴブリン達から情報を吸い上げ、フィードバックしているのではないかと。
中国ではゴブリンの野生化が大々的に報道されていたので、全く無関係とは思えないのだ。
他の国については、研究用で持込まれたゴブリンが原因じゃないかな?
ま、原因が分かったところでこの話が広まらないなら関係ないんだけどね。
ギルマスと話をした事で、僕の中にある不安はずいぶん和らいだ。
細かい事をいえば、何も解決はしていない。
だけど不安を人と分かち合う事で、誰かにそれを吐き出す事で、気持ちが楽になるというのは間違いない。
一番辛いのは、苦しみを人と分かち合えず独りで抱え込む事なのだ。
それにしても、と意識を別なところに向ける。
今回話をしに来た事で、僕の中にあった不安は減った。
でも、新しい問題を背負わされる事になった。
困った事に、もしかするとだけど、世界がファンタジーで染められるかもしれないという未来予想図。
今でも瞬間的に人を癒やす回復薬や、ゴブリンなどのサーヴァントが持込まれているというのに、更にファンタジーになるという。
本当にそれが人類絶滅の引き金になるかどうかは分からないけど、今の社会がそれを問題視するのは間違いないよね。
……聞かなきゃ良かったかなぁ。
気持ちが軽くなったプラス分と比較して、知って重くなった気分で赤字じゃないかな?
トータルでいえばトントンだと自分をだますしかないよね? もう聞かなかった事にはできないんだからさ。
気持ちを切り替え、今日のお勤めを済ませて、美味しい物を食べたら81回目のアタック開始だ。
いつまでも出ない答えを探してちゃいけないよね。
前回の宝箱は雄オークが出てしまったので、担当者は雌を求めてまた迷宮入り。
従って僕たちはまたゴブリンの森へと向かう。
もし迷宮にいったりしてもあの地図をもう一度見るために同じ集落に行く事にしただろうけどね。みんなと都合が合うならその方がいいから運が良かった。
「あれ?」
殲滅し終えた集落を歩くが、壁画の内容がただの絵に切り替わっていた。
描かれているのは狩りや農業をするゴブリンの絵。地図ではない。
場所を間違えたという事は無い。壁画を描ける場所などそういくつもあるものでは無いし、非常に目立つ。これで場所を間違えるなど、そうとうな方向音痴と言われるだろうが、僕はそれに当てはまらない。
つまり、地図が消えている。
しばらく考えてみたけど、答えは出ない。
それなら、他の集落も見に行ってみよう。
大集落は無理だが、周辺には後2つの集落がある。他の集落になら地球の地図があるかもしれない。
別に壁画の確認なんてする必要は無いんだけど、自分の中の、何かしなくちゃいけないという衝動に突き動かされて、僕はゴブリン集落巡りをするのだった。




