謎の壁画
アタック80回目。
そろそろアタック100回、約2年というのが見えてきた。
2年経ったからどうだって話でもないんだけど、自分の成長度合いや攻略の進捗、ホームの状況なんかをまとめるには、こういった区切りの良い時にやるのが分かりやすいだろうね。
日本ではまた事情聴取なんかもあり、警察に顔を出してきた。
僕は一応ではなくれっきとした被害者なので、僕と加害者との証言や認識の齟齬なんかを埋めるために何度か話をする必要があるのだ。
加害者側の証言に嘘や矛盾がないかのチェックという意味合いが強く、僕もよく覚えていない事まで根掘り葉掘り聞かれた。
単純なお話であれば電話でもいいと思ったけど、警察の人は僕の表情なんかからも情報を得ているらしく、直接顔を見せて話をしないとダメなようだ。
そうやって余計な用事を済ませて挑む今回のアタックも、宝箱の件があるので僕らは森の方に出かける事にした。
出雲を設立したけど、このゴブリンの森で集落潰しをするのはいつものメンバーだ。
正直、ゴブリン側の重鎮が義姫以外は全員で揃っているような状態なので、これはどうなんだろうと思わなくもない。
でもまぁ、僕らはきっと最後までこのメンバーで頑張るんだろうなぁと、何となく、そんな気がした。
今回は、大集落ではなく、最初に見つけた集落を襲う事にした。
ゴブリンの集落の近くには昔に設置した防衛陣地がある。集落に火を付けてここまで追い込む手順は新しく作り直したので、この陣地で迎え撃とうと思う。
軽く集落そのものに襲撃を仕掛け、すぐに陣地まで退くと、ゴブリンたちは100匹ほどの集団になってここに向かって来る。
そこを催涙弾で無力化し、仕留めれば、30~50匹のゴブリンを仕留められるとは普段この集落を担当している刀の言だ。
彼らも数をこなすことで手順を効率よく進められるようになっていた。
僕らはその手順を見習わさせてもらおう。
そうやってゴブリンを殲滅すると、僕らは昔の様に集落の跡地を散策する。
そういえば、と僕はかつて壁画を見付けた場所へと足を運ぶ。
「あれ?」
壁画はあった。
ただ、描かれている絵が変わった。
昔、見付けたのは、農業をしている絵や何かを祭っているような絵だった。
文字の無い、文字が出来たばかりの古代文明的な絵があったはずだ。
でも今ここにあるのは、違う絵だ。
おそらくこれは地図。
この集落周辺の絵だ。
そして中国の地図だ。日本は無いけど朝鮮半島や東南アジアまで描かれているので間違いないと思う。
あれから何回のアタックをしていただろうか?
その回数の先で、どうして中国の地図が出てくる?
日本の地図ならまだわかる。僕は一度もそんなものを持ち込んじゃいないんだぞ?
分からない。
分からないが、地球上のどこかの情報が、こちらの世界に流れ出しているって事か? プレイヤーの情報がこの世界に反映されている?
これまでプレイヤーごとに用意されていると思っていた世界が、繋がっている?
そういえば地球上でも情報規制とかオーヴァーランダーの影響を受けている。買ったアイテムが届きもする。世界は繋がっている。それは間違いない。
何の確信もない悪寒に襲われ、僕は漠然とした不安を抱いた。




