出雲のバイト
出来たばかりの部隊に固定の仕事があるはずもなく、『出雲』は完全にフリーの状態だ。
そんな訳で、出雲に仕事を振るのが僕の最初の課題になった。
やらせたい事はあるけど、その能力が無い。
それが今の出雲だ。
いずれ本業になる戦闘関係や魔法関係はスキルが揃っていないから、まだこれからだ。
なので、生産関係をやらせておこうと思う。
生産関係は鞍馬の管轄で、農業・畜産関連は別のゴブリンが担当している。
僕はたまに口を挟むけど、基本は任せっきりである。
だからスキマ産業的にやる事を考える。
最初に思いついたのは実験農場だけど、やりっぱなしになることを考えると、それはやめておいた方が良い。
畜産はそもそも動物の数が問題になるので、僕らの手を出す隙間が無い。
そうなると必然的にモノ作り、生産系しか出来そうなことが無い。
短期の仕事で引き継ぎなどを考えず、今の僕らにも出来そうなこと。
選択肢はいくつかあったけど、木材を使った製紙に手を出すことにした。
製紙が簡単な仕事という気は無いけど、難しいのは品質を強く求め追いかけた時の話だ。多少、いや、かなり雑な作りでよければ僕らでも作ることはそこまで難しくはない。
使えそうな木材さえあれば、あとは道具を少し用意するだけですぐに始める事が可能だ。
製紙をするのに必要な道具は、紙の素になるモノを作るのに使うすり鉢と、その素を延ばすのに使う木枠だ。
どちらも今の僕らなら簡単に用意できる。陶器製のすり鉢とそこそこ大きい木枠を用意した。
原料になる木の方は、試しながら自分たちで調べるしかない。
これは完全に情報が無いのでしょうがない。
あと、紙の形でまとめるためのノリにはお米などを使うらしいけど、ここはジャガイモで代用してみる。……畑のジャガイモは使ってはいけないので、使うジャガイモは森まで回収しに行ったよ。
この時に気が付いたけど、ドングリの様にジャガイモも多少はEPで固定化しておいた方が良いと、今更ながらに気が付いた。
スキル獲得の端数で余ったEPを使って、今度、固定しておこう。
素人製紙の方法だけど、とにかく木材の白い部分を細かく砕いて、煮詰めて要らないものを取り除き、ノリと混ぜて薄く延ばし、木枠に入れて乾燥させるという方法を取る。
某テレビ番組では厚さを均一にとか言っていたけど、初心者にそんな技術を求めるだけ無駄だと思う。
なので、失敗とか品質低下を恐れず、とにかく数を挑戦してみる事にした。
結果、ボロボロだったり薄すぎたり一部に穴の開いた紙が出来上がったけど、「まぁ、使えない事も無いかな?」ってレベルの物も出来上がった。
色については漂白工程が無いので真っ白とはいかず、ちょっと茶色っぽい。
表面はザラザラで鉛筆で何か書こうとすると途中で引っ掛かる。
でも、紙と言っていい物が出来上がった。
あとはこれを記録に残し、より上手く作るにはどうしたらいいか積み重ねられるように考えよう。
そういえば、花を混ぜて色付き、香り付きの紙を作ってた漫画があった気がする。
それぐらいなら僕らにもできるかな?




