族長と独立研究班
僕らがトイレ事情をどうにかしようと動き、みんなはみんなで仕事を頑張っていると、時間はあっという間に過ぎてしまう。
そして、今回の宝箱の中身が届いた。
待望の、雌オークである。
雌オークの登場に、白オーク2匹は諸手を挙げて喜びをあらわにした。
オークはゴブリンに欲情しない。種族が違うので当たり前だ。普通の人間が猿に欲情しないような物だ。
ようやく、自分の性欲をぶつける相手が見つかり嬉しいのだろう。
ゴブリンと違いオークの繁殖に関する情報は出回っていないから、オークの繁殖がどうなるのかは分からない。
ただ、長い妊娠期間や短いサイクルでの出産が予想されるため、できればもう1匹のオークが欲しいというのが僕の考えだ。1匹では母体への負担が大きすぎる。
よって宝箱巡りは雌オークがもう1匹出るまで続ける事になっている。
あと、オークはオークでコミュニティを作れればと考えている。
基本、生活は種族ごとでまとめ、管理し、運用については種族ではなく能力を見て行えばいい。
そのうち種族ごとに役割分担をするかもしれないけどね。
「じゃあ、ゴブリンの族長は信綱が。オークの族長は鞍馬がするように。
補佐はそれぞれ誾千代と静御前に任せるから、内政面は2匹に任せればいい。族長の仕事は、いざって時に前面に立つ事と心得ておけ」
「分カッタ」
「ブヒ」
今後の村運営の一手として、種族ごとの代表、族長を決める事にした。
これまでは村にいるのがゴブリンばかりで、鞍馬たちオークは数が少ないと言うより家庭が無いというお客さん的な立場だった。
だけど母オーク予定の1匹が加わったので、種として一つの立場を得たと判断したのだ。
宝箱回収だけでオークを増やすっていうのは現実的じゃ無いからねー。
族長選抜には、戦闘能力をメインの選考基準にしてみた。
実際の内政面は交渉役に向いていそうな誾と、普段あまり仕事の無い静御前に任せる。静御前はともかく誾の負担が大きいけど、そこは頑張ってもらいたい。なんなら戦闘パーティから外していいとも思うし。回復魔法の使い手は貴重だけど、いざとなればEPで増やす事も検討するだけだ。
なお、この族長選出基準は村のみんなからも理解を得ている。
やっぱり力強い奴が良いっていうのもあるし、この2匹はそれぞれの種族の最初の1匹なので理解を得やすいというのもある。
族長を信綱・鞍馬にするのに反対する者はいなかった。
補佐官になる2匹についてもそれは同様。
まぁ、反対するとか以前に族長や補佐官の意味を理解していない可能性もあるけどね。……さすがにそれは無いかな?
こうやって新しい指揮系統を作った事で、僕は仕事をそこそこ減らし、何か人手が欲しい時には誾や静御前の意見を聞かなきゃいけないという制約を負った。
村の内政面ではこの2匹がトップになるため、人事関係も彼女らがメインで取り仕切る。僕が勝手に人を動かすと困った事になりかねないというわけだ。
しばらくは大丈夫だと思うし、本当に人手が欲しければ独立部隊でも作ればいいんだけどね。
それはそれで面白いかもしれないなぁ。
戦闘用部隊ではなく、研究用とか個人的な思いつきを形にするための部署って事で。
藤孝の魔法研究とは別に、何匹か囲い込むか。
その程度のお遊びをする余裕はあるよな?




