久しぶりの休暇
僕らはゴブリンの処理を終えると、森の中に退いて休憩を取った。
けど、こうやって森の中で戦っていると割と落ち着く自分がいる。
ここ最近は迷宮にこもっていたけど、太陽の光を浴び、広い空の下で戦えた事が心地よかったみたいだ。
やっぱり僕は野外で戦う方が好きで、迷宮のような暗くて狭いところで長時間戦うような生活が嫌いだったらしい。
スケルトンと戦う事は特に苦にならないけど、制約が強い迷宮は思った以上に嫌いなのだろう。かなりストレスが溜まっていたみたいだ。
やっぱり人間は日の光と共に生きる生き物なんだろうね。
さて。
ゴブリン大集落だけど、思った以上に騒がしくなっていた。
大集落は規模が大きくなり人口が増えたけど、その分だけ動きが重く鈍重になった印象がある。
それに、戦闘要員は人口に比例して増えるといった事が無かったんだろう。
人口が増えていくと、仕事っていうのは分業化が進む。小さい集落であれば一人一人が何でもできないと困るけど、規模が大きいところでは何か一つに専念して打ち込むだけの仕事量があるので、職の専門家が進むんだ。
そうなると増えた人口とは別に、戦闘専門の兵士のような役割は集約化され、結果として少数精鋭といった形に落ち着く。
つまり、この大集落は規模ほどの戦闘要員が居ないんだろう。
そこで30匹もの兵士ゴブリンが何の戦果も挙げずに死ねば、集落の方も恐慌状態に陥り混乱するというものだ。
もっとも、そこで油断して攻め入れば非戦闘員も武器を取り戦うだろうから、結局は数の暴力で僕らが押しつぶされて終わるんだろうけどね。
まだ重要施設を守る兵士はいるだろうし。
危ない事を避けてチョコチョコとちょっかいをかけ、また敵をおびき寄せるっていう選択肢もあった。
けど、今回の仕事はリハビリも兼ねているので僕らはそのままホームに戻る事にした。
一仕事終えてホームに戻ると、他の集落を攻めていたゴブリンも戻ってきていた。距離の都合上、1泊した僕らより早く戻ってくるのは当たり前の話だけどね。
ホームにいないのは採取にいっているメンバーと、迷宮泊をしているメンバーの13匹だけだ。他はみんなここに居る。
そのうち何匹かは木の棒や竹槍で素振りや模擬戦をしていて戦闘訓練をしている。
こうやってみんなを見ると、あの大集落と同じように分業化を進めてはいるけれど結局はほぼ全員が戦闘要員なんだなと思い、深入りしない事を決めた自分を褒めておく。
もしかしたら連中も同じかもしれないからね。危険な事はしなきゃいけない時もあるけど、普段は怪我をしないように注意した方が良いから。無駄に強気で攻め入る必要なんて無い。
EPは着実に増えているから何の問題も無いよ。
今回は早くにホームに戻ってきたので、自由に使える時間がけっこうある。
こういう時はやりかけの仕事を進めるのが良いと思う。
そんなわけで、今日は家を建てる仕事をしよう。
家を建てるという事で、ゴブリンに指示を出し空き地にレンガを積ませる。
積んだレンガにはコンクリ的な物を塗っているので、多分これで大丈夫、だと思いたい。
以前疑問に思った屋根に関しては、屋根はレンガを使わないのが一般的という回答を得たので、それに倣って木組みの屋根にしている。
すぐには気がつけなかったけど、昔の日本の農村の家だって土の壁に藁葺き屋根が多く、どちらかといえば木造の骨組みを使う事の方が一般的だった。それに、お寺とかの屋根は木造が当たり前だ。ヨーロッパのでっかい寺院のように石の屋根で作る方が珍しい。
つまりだ。変なイメージに引きずられて変な事をしていたわけだね、僕は。
勘違いを正した僕は、木造の屋根に草の束を乗せるように指示をする。
夏場だとこういった屋根の方が涼しいらしいからちょうどいい。7月ともなると気温が30度を超えるだろうし、涼しい家の方が良いよね。
……竹の家の方が涼しげだという突っ込みが来そうだけど、あの家よりレンガの家の方が家っぽいと思うので、そこはスルーしておく。
レンガを積んでもコンクリがすぐには乾かないので、途中まで造ったらしばらく出番は無い。
ついでに建材のレンガは有限だ。最近は迷宮にこもる時間を増やしていたのでストックが減ってしまったという問題もある。
レンガの家はコツコツと数を増やしていくとしよう。
家の数は足りているし、そこまで慌てる事でも無いからね。




