鮎漁
鮎を購入した後に水面を覗いてみれば、苔を食む鮎の姿が見えた。
いいね。
そこそこのサイズの鮎が何匹もいる。
購入後の説明を確認すると、鮎は僕らが繁殖させなくても勝手に数を増やすとあった。
一時的に捕り尽くそうが日本に戻るたびに回復するので、今後はEP消費をせずとも永遠に魚が手に入る。
一回で手に入る鮎の数を増やしたければ、EPで追加すればいいみたい。今はEPが足りないので増やせないけどね。
これってかなり凄い事だと思うけど、よくよく思い返してみればすでに猪の死体を森に固定化してあった。
猪肉などを無限に入手できるのに必要なEPが500Pと考えると、鮎とか食料品の無限入手はそこまで制限すべきものではないのかな?
細かい事は横に置き、お魚を好きなだけ食べられるというのは善い事だ。
では早速……どうやって鮎を捕まえようかな?
鮎を捕まえようと思うと、鵜飼いなんかは絶対に無理として、出来そうなところでは友釣りなんかが頭に浮かぶ。
ただ、僕に釣りの趣味は無いので、釣り竿なんかは持っていない。できればゴブリン連中にやらせたいし、罠の方が良いのかな? 網の方がもっと効率が良さげだけど、網の作り方は僕にはよく分からないから。もっと簡単な罠で対応するとしよう。
「という訳で、川で鮎を取ります」
「グギャッ!」
罠を作る事は簡単なので、さっそくゴブリン3匹を部下に、仕掛けを作ることにした。
作る罠は、正式な名前をよく覚えていない、追い込み漁の囲いだ。
浅瀬に石を並べて通行止めのエリアを作り、そこまで鮎を追い込むだけというシンプルなもの。
掬いあげるために竹を編んで作った大きなザルがあるので、手掴みに挑戦する必要はない。
大きな石やハンマーを使って魚を捕る方法があるって言うけど、あれは都市伝説というか実際に必要な音の大きさを考えると実用的じゃなかったりする。人の手では出せないような大きい音を立てないと意味が無いのだ。
できない方法は横に置き、今は罠制作だ。
ゴブリンに指示を出し、川の一部に石を並べさせる。並べた石で「ユ」の形を作り、その中に鮎を追い込む算段だ。罠は下流に設置することにした。
ついでに、追い込んだ後すぐに蓋をできるよう、木の板も持ってきた。
川の深さは深い所でも50㎝ぐらいしかないので、1時間ほどで罠の作成は終わる。
では早速鮎を、と言いたいけど、こうやって作業をした以上は鮎も僕らを警戒しているだろうから、決行は明日に持ち越しだ。焦ってはいけない。
本日は6日目で、今日の昼に僕は日本に戻る予定だ。
つまり、午前中にすべてを終わらせる必要がある。
僕は昨日のゴブリン3匹を連れ、川へと向かう。
2匹は罠の横に置いた。これで鮎はゴブリンを避け、罠の入口へと向かうだろう。
1匹はすぐに入り口を塞げるように待機している。
僕は鮎を追い込む役だ。
捕まえるのは蓋をしてからになるので、蓋役以外の全員で行う。
上手く捕まえられるといいんだけどね。
「行くぞ!」
「ギャ!!」
僕らは上流から、わざと水を大きく掻くように歩を進める。
鮎は僕らに驚き、下流へと逃げていったのが見えた。
しかし下流の左半分にはゴブリン2匹が待機していて、そっちはそっちで存在感を主張するように水をバシャバシャ叩いているので、鮎は自然と罠の中へと追い込まれていく。
「今だ!」
ある程度の数、鮎が罠に逃げ込んだところで蓋をさせた。これで鮎は逃げ場がなく、狭いところに密集することになる。
そうなれば後は簡単だ。僕らは竹のザルを使い、鮎をどんどん掬い上げていく。
最終的に、鮎は20匹ほど捕まえる事が出来た。
その後、手に入った鮎はすべて塩焼きにして僕らのお腹の中に消える事になった。
みんなに分けようにも数が少ないのでしょうがないのだ。
今度捕まえた時は雑炊を作ろう。
そう思えるほど、鮎は美味しかった。




